この記事の要点
- はさみが進まないときは、刃を開閉する手と、紙を持って動かす手を分けて見ます。困っているところを一つ手伝うと、取り組み方を変えられます。
- 手を使う遊びは、はさみの練習だけではありません。紙をちぎる、粘土をつまむ、シールを貼るなど、本人が楽しめるものから選べます。
- 着替えや食事でも困る、本人がつらそう、親の心配が続くときは、園や地域の相談先へ。家庭で練習を済ませてから相談する必要はありません。
目次
- 「不器用かな」と思ったら、困る動作を一つ見る
- はさみでは、道具と紙の扱いを変えてみる
- はさみを使わない、手の遊びも選べる
- 園と共有したいこと、相談先で話せること
- 日本のはさみ研究で分かったことと限界
- 今日できるのは、一つの手助けでよい
「不器用かな」と思ったら、困る動作を一つ見る
工作で紙を切ろうとしても、くしゃっと折れてしまう。折り紙の端を合わせようとして、何度もずれる。年中・年長になると、周りの作品を見て「わが子は手先が不器用なのかな」と気になることがあります。
まずは「もっと練習しよう」と課題を増やす前に、今どの動きで困っているかを一つ見てみましょう。はさみなら、開くところ、紙を押さえるところ、切る向きを変えるところ。途中で止まる場所によって、手伝えることも変わります。
英国NHSの家庭向け案内では、はさみを使う動きには、両手を一緒に使うこと、刃の開閉、座る姿勢、紙を持って回すことなどが関わると説明しています。「切れない」の一言にも、いくつかの動作が含まれています。NHSのはさみの案内
子どもが「やだ」と言ったら、理由を上手に説明させなくても構いません。「紙を持つのを手伝おうか」「今日はここまでにする?」と、一つ提案できます。本人がやりたがらない日に、苦手なところを調べるための工作を始める必要もありません。
以下の声かけや遊び方は、公的な支援情報を参考にした家庭向けの例です。原因や病気を判断するチェック表ではなく、年齢ごとの合格ラインを決めるものでもありません。
はさみでは、道具と紙の扱いを変えてみる
まず、大人が道具を確かめる
使っているはさみは、その紙を無理なく切れるでしょうか。子どもの手に合う物か、左手で使う子に右手用を渡していないかも確認できます。NHSも、子どもに合い、材料をきちんと切れるはさみを使うことと、大人の見守りを勧めています。道具選びと安全の案内
切りにくさを感じたら、力を入れて何度も続けさせず、いったん大人が道具と材料を確かめます。対象年齢や使い方など製品の表示を守り、はさみを使う間はそばで見守ってください。
紙を持つことが難しいとき
大きな紙が垂れてしまうなら、持ちやすい大きさにして渡す方法があります。薄くてくしゃっとなる紙は、切りやすい厚さの、少し張りのある紙に替えてみてもよいでしょう。硬く厚い紙を力任せに切る遊びにはしません。
「ここを持っていようか」と、紙を安定させる部分だけ手伝うこともできます。刃の進む先へ指を出さないようにし、子どもが紙を持てそうなら手助けを減らします。大人が手を添えることを嫌がるなら、無理に動かさず、いったんはさみを置けます。紙の大きさを変えることや、小さく切り込むことは、NHSの案内でも紹介されています。紙の扱い方
長く切り続けることが難しいとき
最初から丸を一周切り抜かず、紙の端に短い切り込みを入れる遊びにできます。線に沿って切りたがるなら、大人が太い短い直線を描く方法もあります。速さを競わず、子どもが切り終えるのを待ちましょう。短い切り込みや太い線の案内
たとえば、端に少し切り込みを入れた紙を「草」に見立てて遊ぶこともできます。これは編集部の遊びの例です。線からはみ出しても、すぐに切り直しを課さず、本人がその紙で何をしたいかに戻れます。
はさみを使わない、手の遊びも選べる
はさみを嫌がる日は、別の遊びでも手を使えます。英国Somerset NHSの案内には、粘土、紙ちぎり、シール貼りなどが挙げられています。下の例も、好きなものを選ぶための候補です。手を使う活動の案内

紙をちぎって、貼る
一方の手で持ち、もう一方の手でちぎる。細くそろわなくても、ちぎった紙を並べたり、のりで貼ったりできます。大人が少し切り込みを入れて、そこから始めてもよいでしょう。動物など決まった形に仕上げなくても楽しめます。
粘土を押す、つまむ、丸める
指で穴を開ける、端をつまむ、手のひらで丸める。その子がしたがる動きを一緒に試せます。見本と同じ物を作る課題にせず、つぶして終わる日があっても構いません。粘土の感触が嫌なら、別の素材を選びます。
シールをはがして、貼る
台紙からはがすところが難しければ、大人が端を少し浮かせて渡せます。貼る場所は本人が選んでも、紙に描いた道に並べても。小さな枠にぴったり貼ることを目標にしなくても、指でつまみ、離す動きが含まれます。
これらは「毎日全部やる」メニューではありません。遊んだ回数で改善を約束することもできません。本人が嫌がったり疲れたりしたら、その日は終えたり、別の遊びを選んだりできます。
材料は製品の対象年齢と注意表示を確認し、口に入れないよう見守ります。細かな紙やシールなどは、幼いきょうだいの手が届かないように片付けてください。小さな部品を増やさなくても、今ある紙や遊び道具から選べます。
園と共有したいこと、相談先で話せること
家の工作だけでは分からないときは、園でどんな道具や材料を使い、どこで手助けを受けているか聞いてみましょう。次は編集部が作った会話例です。
「家では、はさみを開閉しながら紙を持つところで困っています。園では、どんなやり方だと取り組みやすそうですか」
「ほかの子と比べてどうですか」だけでなく、困った動作と、手伝うと変わるところを共有できます。家では大きな紙、園では小さな紙だった、という違いが分かることもあるでしょう。新たなテストや毎日の計測を頼まなくても、先生がすでに見た場面から話せます。
着替えの留め具や食事の道具でも困っている、本人がつらそうにする、親として気がかりが続く。そんなときは、工作の工夫と並行して、地域の子育て・発達相談を利用できます。八王子市も、就学前の「手先が不器用」という心配を相談内容に挙げています。お住まいの自治体のこども家庭センター、保健センターなどで、相談できる窓口を確認してください。対象や予約方法は地域ごとに異なります。八王子市の相談案内
「いつ、何をしようとして、どこで困ったか」を、覚えている一場面から伝えればよいのです。詳しい記録や作品をそろえることを、相談を始める条件にしなくて構いません。必要な持ち物は予約時に確認できます。
以前できていた動作ができなくなったなど、気になる変化があるときは、練習だけで様子を見続けず、かかりつけの小児科へ伝えてください。米国CDCも、できていたことができなくなった場合や、発達への心配がある場合は、医師と相談するよう案内しています。CDCの保護者向け案内
日本のはさみ研究で分かったことと限界
渋谷郁子が2016年に発表した研究では、日本の一つの市の園に通う年中・年長児92人に、直線や円などの輪郭をはさみで切ってもらいました。対象は4歳10か月〜6歳8か月で、持ち方、線からのずれ、切る時間を調べています。原著全文
切る長さ1cmあたりで比べると、円の課題は直線などより線からのずれが大きく、時間もかかりました。また、研究で分けた持ち方の群の間に、正確さや速さの統計的な差は確認されませんでした。
ただし、特定の課題で様子を調べた研究で、持ち方を変える指導や、家庭遊びの効果を比較した実験ではありません。「どんな持ち方でも安全」「粘土をすればはさみが上達する」と確かめたものではありません。
対象は一つの市の園児で、発達障害などの診断を受けた子どもは含まれていませんでした。また、各図形を切ったのは一度ずつです。家庭での困り方や、全身の動き、診断の要否をこれだけで判断することもできません。ここから参考にするのは、できあがりの形や速さだけで一括りにせず、課題による違いにも目を向けることです。
今日できるのは、一つの手助けでよい
次に工作をするとき、紙を少し小さくする。粘土が好きなら、一緒につまんで遊ぶ。心配な場面を園で一つ話す。その中から、今の親子に合うものを選べます。
入学までに急いで全部できるようにしようとせず、今困っている動作を少し取り組みやすくする。必要な助けを周りと相談しながら、本人が楽しめる時間を残していきましょう。
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参考文献・資料
- 渋谷郁子(2016). 就学前児のはさみ操作における把持パターンと運動パフォーマンスの特徴. 特殊教育学研究, 54(3), 169–178. 原著PDF / DOI. J-STAGE公開日:2019年2月1日。
- Bedfordshire and Luton Children’s Health. Scissor skills. 2024年11月1日最終レビュー。
- Bedfordshire and Luton Children’s Health. Supporting your child’s scissor skills. 2024年11月1日最終レビュー。
- Somerset NHS Foundation Trust. Developing fine motor skills. 2026年2月最終レビュー。
- 八王子市. 心理相談員による心理発達相談. 2025年4月1日更新。
- Centers for Disease Control and Prevention. Milestones by 5 Years. 2026年5月15日付。
資料確認日:2026年10月17日









