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1歳の子に新しい遊びを見せるなら? 指さした物を手がかりに

用意した遊びと違う物を1歳の子が指さしたら、その物で新しい遊び方を見せる選択肢も。16か月児の短期実験で分かったことと限界を踏まえ、毎回の実演やまねの確認を求めない、家庭での一場面を考えます。

この記事の要点

  • 何か見せようと思ったとき、用意した玩具より、子どもが示した物から始める選び方もあります。
  • 16か月児の実験では、指さなかった物への実演より、指した物への実演のほうが、10分後の動作の再現割合が高くなりました。
  • 家庭での手順の効果は未確認。毎回教えたり、まねを確かめたりする必要はありません。

目次

用意した遊びと違う物を指さしたら

積み重ねる遊びを見せようとカップを用意したのに、子どもは横のボールを指さした。そんなときは、カップへ戻そうとする前に、ボールを床でゆっくり転がして見せる始め方もあります。何を使って遊び方を見せるかを、子どもが示した物から選び直す一案です。

ここでは、すでに物を指さす1歳ごろの子と、新しい遊び方を試してみたい場面を考えます。指さしを教える練習や、できることを調べるための記事ではありません。以下の家庭例は編集部の提案で、この通りに行えば学習が進むと検証された手順ではありません。

指さしたからといって、「使い方を教えて」と頼んでいるとは限りません。物を手に取りたいのかもしれず、研究でも指さした動機を確定することはできませんでした。まず示した物を見て、すぐ触りたそうなら、実演を挟まず渡す選択も残せます。[1]

見せるなら、その物の動きを一つ

たとえばボールなら、「ころころ」とゆっくり転がすところを一つ見せる。子どもが使い慣れた重ねカップを示したなら、大きいカップに小さいカップを入れるところを見せる。本人にはまだなじみのない遊び方があり、大人にも余裕があるときの場面例です。

使うのは、対象年齢が合い、破損や外れる小さな部品がないことを確認した、普段の玩具にします。研究用の見慣れない物をそろえたり、新しい教材を買ったりする必要はありません。すでに楽しんでいる遊びを取り上げてまで、別の使い方を見せなくてもよいでしょう。

見せたあとは、「やってみて」とまねを求めず、本人がどう遊ぶかに任せられます。ボールを抱える、カップを並べるなど、大人の実演とは違う遊びに移っても、正解へ戻すために見せ直す必要はありません。指をさすまで玩具を渡さない、という条件にもせず、普段の遊びの中で選べる一場面にとどめます。

子どもが示した大きなボールを、保護者が床でそっと転がして見せる家庭の場面例。横には重ねカップがある。
見せる物を、子どもが示した物から選ぶ一案。まねを求める手順ではありません(編集部による家庭の場面例)。

研究が比べたのは、どの物の動作を見せるか

Begusらが2014年に発表した研究では、英国ロンドンの研究参加登録者から募った16か月児50人(実際の範囲は15.2〜16.2か月)を分析しました。実験1に16人、実験2の二つの条件に各17人を無作為に割り付けています。別の14人は、ぐずりや機器の不調、指さしがなかったことなどで分析から除かれました。[1]

実験1では、初めて見る物を二つずつ提示し、子が指した物か、指さなかった物の動作を、大人が一度実演しました。10分後に物を渡し、見た動作をするよう促すと、指した物についての動作のほうが、再現される割合が高くなりました。物の名前だけを伝える場合と、動作を見せる場合の比較ではありません。[1]

実験2でも、子が指した物を毎回実演する条件は、選択させず一つずつ物を提示して実演する条件より、再現の割合が高くなりました。ただし、この比較の統計検定は、差が出る方向を片方に絞る「片側検定」でした。[1]

少人数で年齢の幅も狭く、選択なしの条件以外では、実験中に少なくとも2回指さした子を分析しています。実演者は子どもの選択を知っており、付録で実演中の言動なども点検していますが、影響をすべて除けたとは言えません。家庭での長期的な学びや語彙の増加、好奇心が続くかは測っていません。[1]

毎回教えず、遊びのままで終えていい

この研究を手がかりにするなら、「今日は何か見せたい」と思ったとき、見せる物を選ぶ参考にするくらいから。研究の「一度」「10分後」は実験の条件であって、家庭で守る回数や待ち時間ではありません。あとで覚えているかを試す必要もありません。

指さしをしない日や、見せた動作をまねしない日も、この記事から子どもの能力を判定することはできません。指さしを待つことを遊びの条件にせず、今している遊びを一緒に眺めたり、別の遊びに移ったりしてかまいません。

大人が疲れているなら、新しい遊び方を考えない日があってよいでしょう。毎回の指さしを学びの時間に変えようとせず、「今日はこっちを見せてみようかな」と思えたときの選択肢にしておけます。

出典

[1] Begus, K., Gliga, T., & Southgate, V. (2014). “Infants Learn What They Want to Learn: Responding to Infant Pointing Leads to Superior Learning.” PLOS ONE, 9(10), e108817. 2014年10月7日公開。原著全文(本文・付録S1、S2を確認)。DOI: 10.1371/journal.pone.0108817。