この記事の要点
- 質問が浮かばないときは、出来上がった質問をもらうほかに、気になる言葉を手掛かりにする方法もあります。
- 研究ではキーワード型のヒントで「本文の先を知る問い」の割合が高くなりましたが、質問の質の得点に群間の有意差はありませんでした。
- 家庭ではAIなしでも十分。本人が知りたいことが残るよう、ヒントは選べるものに。
質問を代わりに作る前に、気になる言葉を一つ
調べ学習の資料を読んでも、「何を調べたいか分からない」。そんなとき、AIに質問をいくつも作ってもらえば進みそうです。けれど、子ども自身の問いを考える場面なら、まずは資料の中から気になる言葉を一つ選び、必要なら「なぜ」「どう違う」といった出だしを添える方法があります。質問の文まで、大人が仕上げなくてもかまいません。
これは家庭で効果が確かめられた手順ではなく、問いを作る支援の研究から考えた編集部の提案です。ここでは、すでにある疑問を絞り込む前の、「読んだことから次に知りたいことを見つける」場面を扱います。
同じ言葉から、違う問いが生まれてもいい
たとえば、橋についての短い資料を読んだ場面を想像してみます。以下は説明用の仮例で、実験で使われた課題や子どもの発言ではありません。
子どもが「橋の形」という言葉を気にしたら、大人は「どう違う、で始めてみる?」と声を添えられます。「橋の形で何が違うの?」になるかもしれませんし、「同じ川なのに、どうして違う形の橋があるの?」と別の疑問になるかもしれません。
ここで大人が用意するのは、正解の質問へたどり着くための穴埋めではありません。本人が「それは気にならない」と言ったら、出だしも言葉も変えてよいものです。気になる箇所を指さしただけなら、「ここが気になったんだね」で止めてもよいでしょう。
最初から「なぜ」を求める必要もありません。「この言葉は何?」と、読んだ内容を確かめたいこともあります。本文に答えのある問いを悪い質問として直さず、その子が今知りたいこととして受け取る、という使い方です。

研究が比べたのは、質問を作るためのヒント
Abdelghaniらの研究は、フランスの小学校2校・3学級、9〜10歳半の75人が対象でした。事前の情報を使って疑似無作為に24人・26人・25人の3群へ割り付け、同じ週に各1時間の活動を3回実施。問い作りの練習はそのうち1回です。論文は2023年6月にオンライン公開され、2024年の巻に掲載されました。
比べたのは、大人が作った「ある質問の答え+問いの出だし」、GPT-3が作った同じ形式、GPT-3が作った「キーワード+問いの出だし」の3条件です。子どもがAIと自由に会話した実験ではありません。出力は大人が事前確認し、フランス語に訳して保存したものを教材として使いました。
キーワード型の群では、採用された質問のうち、答えが本文に明記されていない問いの割合が他の2群より高くなりました。一方、文の組み立てなどを含む質問の質の得点には、群間の有意差がありませんでした。「どんな質問でも上手に作れるようになった」とは読めません。[1]
支援を受けない群はなく、採点したのも研究担当者です。短期の教室での結果なので、家庭での使いやすさや長く続く効果は分かりません。AI自体が好奇心を育てることや、今のチャットサービスでも同じ結果になることを示した研究ではありません。[1]
AIを使うなら、大人のヒント案づくりまで
家庭でこの考え方を取り入れるときは、ヒントを増やすより先に、選んだ言葉のどこが気になるのかを聞いてみてもよいでしょう。「形」と言っていても、橋を横から見た曲線なのか、上から見た道路の形なのかで、浮かぶ問いは違いそうです。大人と子どもが同じ箇所を見ながら話せるよう、資料は手元に残しておきます。
AIはなくてもできます。大人がすでに使える環境でヒント案を作る場合も、完成した質問を出してもらう以外に、資料に合う短い言葉を大人が選び直して渡す使い方も考えられます。知らない言葉ばかり、答えを決めつける言葉、資料と関係の薄い言葉なら使わず、手で考えたヒントに戻れます。これは研究そのものの再現ではありません。
大人が「よい問い」と思うものに直し続けると、いつの間にか大人の調べたいことに寄ってしまうこともあります。「どっちが気になる?」と選べる余地を残して、思いつかない日は読み物の話だけで終えても大丈夫です。まず残したいのは提出用に整った一文より、本人の「そこを知りたい」という小さな手掛かりです。
出典
[1] Abdelghani, R., Wang, Y.-H., Yuan, X., Wang, T., Lucas, P., Sauzéon, H., & Oudeyer, P.-Y. “GPT-3-Driven Pedagogical Agents to Train Children’s Curious Question-Asking Skills.” International Journal of Artificial Intelligence in Education, 34, 483–518 (2024). オンライン公開:2023年6月30日。 掲載誌・DOI / 全文を確認した著者稿v6(2023年5月30日版、本文・付録)。









