この記事の要点
- 止まっている場所を、一つ確かめる: 問題の意味、計算の仕方、書く作業。何に困っているかで、必要な手伝いも変わります。
- 教え方が分からなければ、学校の例へ戻る: 大人の解き方を押し通さず、教科書や授業のノートを一緒に見る。分からない部分は先生に確認できます。
- 言い合いになったら、いったん区切る: 困った問題を残し、家庭での様子を学校へ伝える方法もあります。親だけで解決し切る必要はありません。
目次
算数の宿題を見ていたら、「学校ではそうじゃない」「さっきも言ったでしょう」と言い合いになってしまった。手を出しすぎたのか、それとも説明が足りなかったのか。終わってからも迷うことがあります。
そんな日は、手伝う時間や問題数を増やす前に、どこで行き詰まったかを分けてみます。問題の意味を確かめることと、解き方を教え直すことでは、必要な関わりが違います。
小学校低学年の算数を調べた研究でも、親が関わるかどうかだけでなく、その場でどんな気持ちになっているかが取り上げられています。研究から一律の「正しい手伝い量」は決まりませんが、親子が疲れる場面を見直すきっかけにはなります。
「できない」の手前で、何が止まっているかを見る
子どもが鉛筆を止めていても、計算そのものが分からないとは限りません。「何を答える問題か」がつかめていない、学校で使った方法を思い出せない、書き直しに疲れたなど、いくつかの場面が考えられます。
まずは「どこまで分かった?」と聞いたり、最後にできたところを指してもらったりします。最初からすべてを説明し直すより、いま必要なことを探すためのひと言です。答えが返ってこなければ、問題文を一緒に読むところまでにしても構いません。
「ひとりでできるはず」と待ち続けることも、「ここはこうして」と全部進めることも、その子が求める助けと合わない場合があります。「問題を読むのを手伝おうか」「ノートの例を探そうか」と、具体的に聞いてみる方法があります。
本人が「少し自分で考えたい」と言ったら、すぐ横で答えを確認し続けず、呼ばれたら戻る形も選べます。反対に、一緒に見てほしいと言われた日は、その一問を見る。それを翌日からの固定ルールにする必要はありません。
親の解き方と学校のやり方が違うとき
大人には簡単に見える問題でも、いま学校で何を学んでいるかによって、途中の書き方や使う図が違うことがあります。
「こっちのほうが速いよ」と新しい方法を重ねる前に、教科書や授業のノートで、似た問題を一つ探します。「この例では、どうしている?」と一緒に見るだけでも、何を確かめればよいか整理できます。

見本を見ても意図が分からないときは、その場で親が先生の代わりを務めなくてよいでしょう。どの問題で止まったか、どこまで一緒に見たかを、連絡帳など学校で使っている方法で伝えられます。
たとえば「問題文を一緒に読みましたが、式を選ぶところで止まっています。家庭ではどの例を参考にするとよいでしょうか」。これは連絡の文例です。家庭ごとの状況に合わせて、必要な部分だけ使えます。
相談するときも、親子のやり取りを細かく記録し続ける必要はありません。困った一問が分かれば、話を始める手がかりになります。
その場でできる手伝いを、三つの場面で考える
以下は編集部による家庭での提案です。後半で紹介する調査が、それぞれの声かけの効果を試したわけではありません。
いったん区切るときは、「もう知らない」と突き放す代わりに、次を短く伝えてみます。「少し離れてから、残りを確認しよう」「今日はここが分からなかったと伝えよう」など、その日にできる見通しです。
提出が気になっても、親が代わりに解いて、分かったことにする以外の方法があります。学校から対応の指示があるときは、それも確認しながら、困りごとが伝わる形を相談しましょう。
483組の調査では、算数をする場面によって親の気持ちが違った
Wuらの2022年の研究は、米国中西部の小学1・2年生と保護者483組を対象にしています。保護者に12日間の日々の回答を依頼し、算数の宿題と、料理の計量や数を使うゲームなどの活動への関わりを尋ねました。実際に回答した日数は、平均で約9日です。
保護者は平均すると、活動に関わるときより、宿題に関わるときのほうが、楽しさや満足感を低く、いら立ちや不安を高く報告していました。また、宿題中のいら立ちや不安の報告は、約1年後の子どもの算数への好みなどと関連していました。原著研究の方法・結果
ただし、日常を調べた観察研究であり、親の気持ちが子どもの変化を引き起こしたと断定できません。宿題の難しさ、期限、その日の事情なども関わり得ます。親の一度の言い方から、その後の成績が決まると読める結果ではありません。
対象は米国の低学年で、回答した保護者の8割は母親でした。自己報告の偏りもあり、日本の宿題全般や、すべての家庭にそのまま当てはめることはできません。
「いつも楽しく教える」を新しい課題にしない
この研究を読んで、「親が不安になってはいけない」と気を張る必要はありません。研究は、親に笑顔を保たせる方法を試したものではなく、明るく教えれば成績が上がると確かめたものでもありません。
家庭への手がかりにするなら、親の気持ちも、続け方を考える材料にできます。説明を何度も繰り返して疲れているなら、別の例を学校に聞く。毎日長く止まるなら、内容や量を相談する。自分で考えるよう促すだけでは進めない場面もあります。
親が数学を得意になることより先に、「何に困ったかを共有できる」形を選べます。毎晩の宿題を、親の教え方の試験にしなくてよいのです。
今日の一問を一緒に見る日も、学校につなぐ日もあります。親子だけで行き詰まったときに使える手を、もう一つ持っておきましょう。
参考文献
- Wu, J., Barger, M. M., Oh, D., & Pomerantz, E. M. (2022). Parents’ daily involvement in children’s math homework and activities during early elementary school. Child Development, 93(5), 1347–1364. DOI: 10.1111/cdev.13774
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