この記事の要点
- 説明するとき、手の動きも使える: 子どもが式を指したり、左右を手で示したりしていたら、言葉と一緒に見てみましょう。
- 「こっち」がどこか、一緒に確かめる: 指している数や式のまとまりを確認すると、大人も考え方を聞き取りやすくなります。
- 手振りを増やす練習にはしなくていい: 示している内容が分かりにくければ、式に印を付ける、図を見る、言葉で確かめる方法へ。動き自体を課題にする必要はありません。
目次
「こっちと、こっちが同じだから」。算数の問題を説明する子どもの手が、式の上を行き来する。言葉だけでは何を指しているのか分からず、「ちゃんと説明して」と言いたくなることがあります。
そんなときは、手を止めて言葉だけにさせる前に、何を示しているか一緒に見る方法があります。指先や手の動きも、話の中の場所やまとまりを知る手がかりになるからです。
研究では、ある種の等式を学ぶときに、意味のある手振りを自分で行うことが、学んだ内容の保持に役立つ場合も示されています。ただ、どんな手の動きでも算数が得意になる、という結果ではありません。この記事では、小学校中学年ごろの「説明が伝わりにくい」場面に絞って考えます。
「こっち」を、言葉と手の両方から聞く
子どもが式の一部を指しているなら、「今の『こっち』は、この数のこと?」と確かめてみます。二つの数をまとめて囲うように動かしていたら、「この二つを一緒にしたの?」と聞けます。
最初から大人が正解の説明に置き換えるより、本人がどこを見ていたかを確かめる。そのあとで、「この二つを足すんだね」と言葉にしてみる方法です。

説明が短くても、指している場所が分かると、次に何を確認すればよいかが見えてきます。反対に、手の動きが曖昧で分からなければ、もう一度ゆっくり指してもらったり、鉛筆で印を付けてもらったりして構いません。
ここで大人が、手の動きから理解度を診断する必要はありません。同じ場所を指していても、考えている内容が同じとは限らないため、本人の言葉と合わせて確かめます。
「同じ」を考える等式なら、左右のまとまりを見る
研究で使われたのは、たとえば「4+3+6=□+6」のように、等号の左右に数がある問題でした。左側の合計は13なので、右側も13になるように、□には7が入ります。
大切な内容は、等号の両側の値が同じになることです。研究で教えた手振りは、左側の式の下で左手を動かし、次に右側の式の下で右手を動かすもの。左右それぞれを一つのまとまりとして示していました。原著研究
家庭で、既に学校で扱った似た問題を一緒に見るときなら、「こちら側の合計」「こちら側の合計」と、どの範囲の話かを手で示す方法が考えられます。ただし、手振りの形を正確にまねることが目的ではありません。
まだ習っていない内容を、この記事のために先取りする必要もありません。いつもの教材の説明で、場所やまとまりが分かりにくいときの、一つの表し方として使えます。
うまく伝わらないときは、表し方を替える
ここで紹介するのは、研究を参考にした会話の選択肢です。声かけごとの効果を確認した台本ではありません。
子どもの動きが大人の想像と違っていても、すぐ正す前に何を表しているのか聞いてみる。一方、意味が食い違っていれば、式に戻って確かめます。「手を使っているから合っている」と判断することもできません。
保護者が説明を増やすほど、やり取りが複雑になる場合もあります。一つ確認できたら、本人に続きを任せる。疲れているときは、説明をやり直す回数を増やすより、その日は区切る選択もあります。
84人の研究で調べたのは、直後と4週間後の違い
Cookらが2008年に発表した研究では、小学3・4年生に相当する84人が、等式の問題を学びました。対象は、事前の6問で正しい答えや説明がまだできなかった子どもです。
子どもは無作為に三つの条件へ分けられました。等式の左右を同じにする方針を、言葉だけで繰り返す条件、手振りだけで示す条件、その両方を行う条件です。教える大人は、全条件で同じように言葉と手振りを使いました。違ったのは、学ぶ子ども自身が何をするかです。
授業中や直後の問題の正答数には、条件間で明確な差は見られませんでした。その一方、約4週間後の確認では、手振りを使った条件のほうが、直後に得た学習成果を保持しやすい結果でした。方法と結果・誌面1049〜1054頁
つまり、「手を動かした子は、その場で何倍も解けた」という話ではありません。学習直後の理解と、時間がたってからも使えることを分けて調べた研究です。
手を動かせば、何でも覚えられるわけではない
この実験では、決められた手振りを、決められた等式の指導と一緒に使っています。家庭で自由に指を動かす場合や、計算全般、図形、文章題でも同じ結果になるとは確かめていません。指で数えることを、いつまで続けるべきか調べた研究でもありません。
また、言葉だけの条件では手振りを使わないよう指示されており、普段どおりに説明する子どもとの単純な比較ではない点にも注意が必要です。著者ら自身も、あらゆる課題に手振りが役立つとは限らず、役に立たない部分へ注意を向ける可能性を挙げています。
家庭でまず生かせるのは、子どもの説明を聞くとき、言葉と一緒に手が示しているものも見ること。「今の『こっち』はここ?」と確かめて、伝わる表し方を一緒に探す。学習法をもう一つ守らせるより、会話を分かりやすくするために使えます。
参考文献
- Cook, S. W., Mitchell, Z., & Goldin-Meadow, S. (2008). Gesturing makes learning last. Cognition, 106(2), 1047–1058. DOI: 10.1016/j.cognition.2007.04.010
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