この記事の要点
- 「合わせて」があっても、求めるのが全体か一部分かで計算は変わります。まず、何の数を知りたい問題かを確かめられます。
- 「8枚は何の枚数?」と、数字と物を対応させます。答えを急いで直す前に、全体の中に何が含まれるかを一緒に見られます。
- 声かけを全部試す必要はありません。一つ聞く、物を並べる、今日は切り上げるなど、そのときに合う方法を選べます。
目次
文章題で出てきた数を、全部足してしまう。「合わせて、と書いてあるから足し算だよ」と教えたくなるかもしれません。そんなときは、計算の種類を先に伝える代わりに、「知りたいのは、何の枚数かな」と問題の問いへ戻れます。
ここでは、たし算・ひき算を学ぶ小学校低学年の子と、全体と一部分の関係を確かめる例を紹介します。家庭で新しい解き方を増やすより、学校で使っている絵や物、説明を手がかりにして構いません。
「合わせて」が同じでも、知りたい数は違う
次の二つは、この記事のために作った例題です。同じ折り紙でも、分かっている数と尋ねている数が違います。
【問題A】赤い折り紙が3枚、青い折り紙が5枚あります。合わせて何枚ありますか。
Aで知りたいのは、赤と青を合わせた全体の枚数です。赤3枚と青5枚が分かっているので、3+5=8。答えは8枚です。
【問題B】赤と青の折り紙が合わせて8枚あります。赤い折り紙は3枚です。青い折り紙は何枚ありますか。
Bでは、全体が8枚だと初めから分かっています。その中の赤が3枚で、知りたいのは青の枚数。8-3=5で、答えは5枚です。
どちらにも「合わせて」があります。この言葉は、赤と青をひとまとまりにしていることを伝えています。ただ、その一語だけでは、答えを求める計算までは決まりません。
数字の前に「何枚のこと?」を確かめる
Bを8+3としたときは、「引き算でしょ」とすぐに直す前に、8が何を表しているかを一緒に確かめられます。
「8枚は赤だけ? 青だけ? それとも両方?」。赤と青の両方だと分かったら、「この8枚の中に、赤3枚も入っているかな」と続ける方法があります。
全体8枚の外に、別の赤3枚が増えたわけではありません。「全部8枚、そのうち赤が3枚」と、文章の数に名前を添えると、何を数えている話かを共有できます。
学校で□を使った式を学んでいれば、3+□=8と関係を表して考えることもできます。□がまだなじみのない記号なら、ここで新しく教え込む必要はありません。
家では、一度に一つだけ聞いてみる
最初は「この問題で、知りたいのは何の枚数かな」の一つでも十分です。答えを待つ間に、次々と質問を重ねなくても構いません。
子どもが「青」と言えたら、その答えを受け止めます。説明の言葉が出なくても、青い折り紙や問題文の「青い折り紙」を指して伝える方法があります。きれいな文章で説明することまで、同時に求めなくてよいでしょう。
止まっているときには、親が「赤と青で、全部8枚なんだね」と一部分を読み、物を対応させることもできます。毎問、同じ質問の順番を守るための手順ではありません。
絵や物で確かめたら、文章に戻る
折り紙があれば、赤3枚と青5枚を重ならないように置き、8枚全部を一つのまとまりとして見ます。絵にする場合も、全部8枚の囲みの中に赤3枚と青5枚が入るようにします。
これはBの答えが5枚だったときに、話と合うかを確かめる例です。「青が5枚なら、赤3枚と合わせて8枚になるかな」と、文章に戻って確かめられます。

図を描くこと自体が負担なら、毎回描かなくても構いません。実物を指す、問題文の「合わせて8枚」を一緒に読むなど、今の話を確かめられる方法を選べます。
難しい日は、止まった場所を残して終えてもよい
「合わせて」の意味で迷っているのか、8枚が何を指すかで迷っているのか、8-3の計算で止まったのか。全部を一度に解決しようとせず、見えたところだけ覚えておけます。
疲れている日は、「今日は、全部の枚数までは分かったね」と、分かったことを確かめて終えてもよいでしょう。追加の問題や練習時間を必ず設ける必要はありません。
同じところで困ることが続くなら、具体的な問題と、子どもがどの数を指したか、どんな式を書いたかを先生に伝えると、学校での説明と照らし合わせられます。一問の間違いから、能力や親の教え方を決め付けなくて大丈夫です。
研究が示すことと、家庭への応用の限界
米国のFuchsらが2010年に発表した研究では、小学校2年生19学級を無作為に分けました。教員1人の異動後、18学級のうち前後の測定がそろった270人を分析しています。数量の関係、分からない量、式などを扱う一連の指導を、通常の授業と比べた研究です。
共通の導入を含む16週間の指導後、教えた三つの型を測る文章題テストでは、指導を受けた群が上回りました(効果量Hedges g=0.46)。一方、より広い内容を含む標準化テストでは、統計的に有意な差は確認されませんでした。
これは研究助手が学校で行った複数回の指導全体についての結果です。「何の数かな」という家庭の一言だけの効果や、日本語の文章題で同じ結果になることを示した研究ではありません。
米教育省の研究機関IESが2021年に公表した実践ガイドも、特定の言葉を一つの計算に固定して結び付けることを避け、求める量と数量の関係を捉える指導を勧めています。言葉の意味を教えなくてよい、という趣旨ではありません。
本記事の例題や声かけは、これらを手がかりに編集部が考えた家庭向けの提案です。個々の声かけの効果を検証したものではなく、成績の改善を保証するものでもありません。
参考文献
Fuchs et al.(2010)The Effects of Schema-Broadening Instruction on Second Graders’ Word-Problem Performance and Their Ability to Represent Word Problems with Algebraic Equations: A Randomized Control Study. The Elementary School Journal, 110(4). DOI: 10.1086/651191.
Institute of Education Sciences(2021)Assisting Students Struggling with Mathematics: Intervention in the Elementary Grades. Recommendation 5、特に冊子40–41、48–50ページ。公式PDF。









