この記事の要点
- 上手なお話を作らなくていい: 絵を一緒に眺めて、「犬がいたね」と気づいたことを話すところから始められます。
- 質問は、ときどき一つ: 「何が起きたのかな」と誘ってみても。答えを求め続けず、子どもが見ているところを一緒に楽しみましょう。
- 聞いていたい日も、それでいい: 大人が短くお話しする、黙ってページを見る、別の本にする。親子に合う読み方を選べます。
目次
図書館で開いた絵本に、ほとんど文字がない。「これ、どう読めばいいの?」「自分でお話を考えないといけない?」と、戸惑ったことはありませんか。
最初から、起承転結のある物語を作らなくて大丈夫です。絵の中に見つけたものを話したり、前のページと変わったところを眺めたりするところから始められます。子どもの発言を引き出すために、ずっと質問をし続ける必要もありません。
この記事は、主に未就学児との絵本の時間を想定しています。紹介する読み方は、家庭で選べる編集部の提案です。どの読み方にも、発達への効果を約束するものではありません。
まずは、一緒に絵を眺めるだけで
文字のない絵本にも、登場人物の動きやページのつながりがあります。ただ、いつも大人がそれを全部説明してから見せなくても構いません。
最初のページを開いて、少し眺める。子どもが指さしたら、「小さい犬がいたね」と応じる。何も言わなければ、大人が「ここに赤い傘がある」と一つ気づいたことを話してみる。読む文章が決まっていない分、どこに目を向けたかを分け合えます。

ページを行ったり来たりする楽しみ方もあります。「さっきの犬、こっちにもいるね」と戻って見る。順番に最後まで説明し切ることを、その日の目標にしなくてもよいでしょう。
親が一人でたくさん話してしまう日もあるはずです。気づいたら少し待つ、そのくらいから変えられます。
質問するなら、一つ聞いて待ってみる
「これは何?」「どうして?」「次はどうなる?」と続けると、大人も答えを待つことに忙しくなります。声をかけるなら、気になった場面で一つだけ。答えの内容に耳を傾けてみましょう。
質問に答えないときは、もう一度聞く前に、絵を見ている様子に目を向けてみてください。話すより眺めていたいのかもしれません。「お話してみて」が、その時間の課題にならないようにしましょう。
大人と違う読み方になっても、すぐ採点しない
大人には「雨を嫌がっている顔」に見えても、子どもは「水たまりに入りたいんだよ」と話すかもしれません。
そんなときは、「そう見えたんだね」と受け止めたり、「私はびっくりしているのかと思った」と自分の見方を添えたりできます。どちらが正しいかを急いで決めず、同じ絵を見直すきっかけにする提案です。
もちろん、絵に何が描かれているかを一緒に確かめることもできます。「よく見ると、ここに足跡があるね」と絵に戻ったり、「絵にはないけど、そんな続きも面白いね」と想像を楽しんだり。作品を眺めることと、そこから自分のお話を広げることの両方ができます。
子どもが必ず独創的な物語を作る必要はありません。大人と同じ見方でも、「犬がいる」の一言でも、その日のやり取りにできます。
「読んで」と言われたら、大人がお話ししても
いつもの読み聞かせのように、大人の声を聞いていたい日もあります。子どもにお話を作る役を任せ続けなくて大丈夫です。
「犬が歩いてきました。あれ、傘が飛んでいったよ」。絵を見ながら、短い言葉でつなげてみる。うまく続かなければ「このあと、どうなったのかな」と一緒にページをめくっても。
実際に、文字のない絵本を親子などで読む様子を観察した研究でも、子どもが大人に読んでほしがる場面や、興味を保ちにくいという保護者の感想が報告されています。どの子にも、どの日にも合うと考えなくてよい手がかりです。研究1
文字のある本を選び直しても構いません。大人自身がお話を考えるのに疲れたら、「今日は、いつもの本を読もう」と切り替えられます。
本を探すときは「文字のない絵本」と聞いてみる
興味があれば、近くの図書館で「文字のない絵本を見てみたい」と相談する方法があります。買う前に、子どもと絵を眺めて選べるとよいですね。地域や館によって蔵書や利用方法は異なります。
本探しの入り口として、国立国会図書館の国際子ども図書館のサイトにも「文字のない絵本」の紹介があり、蔵書検索へ進めます。世界の作品があることを知る手がかりになります。公的資料1
なお、国際子ども図書館そのものは館外への貸出しをしていません。借りて家で楽しみたい場合は、身近な図書館で取り扱いを確かめてください。
どこまで分かっている? 親子で読む様子の研究
Zevenbergenらの研究では、米国ニューヨーク州の3〜5歳児と大人22組が、スージー・リーの文字のない絵本『Wave』を一緒に読む様子を録画しました。大人や子どもの発言を分類し、読んだあとの大人へのインタビューも分析しています。研究1
多くの組で、親子などが一緒にお話を作るやり取りが観察されました。一方で、大人が主に説明して語る読み方もあり、子どもの関心や大人の感想にも違いがありました。
これは小規模な観察研究です。文字のある絵本と効果を比較する介入実験ではなく、この読み方を続ければ言葉や創造性が伸びると確認した研究でもありません。対象地域や使った本が限られ、日本の家庭すべてに同じ反応を見込むことはできません。
ここでは能力を伸ばすための教材として勧めるのではなく、一緒に絵を見て話すときに、複数の楽しみ方があることの参考にしています。
一ページから、親子の読み方を見つける
今日は、同じ犬を見つけて笑った。別の日には、大人がお話をして、子どもが聞いていた。途中で本を閉じた日もある。
文字のない絵本を前にして、毎回「よい質問」を考えたり、きれいな物語を完成させたりする必要はありません。まずは一ページ、一緒に眺めてみるところから始めてみませんか。
同じ一冊ばかり選ぶことが気になる方は、同じ絵本を繰り返し楽しむときの付き合い方も参考にしてみてください。
参考文献・資料
参考資料へのリンクは別タブで開きます。
- Zevenbergen, A. A., Angell, A. L., Battaglia, N. A., & Kaicher, C. M.(2021). Co-Constructing Stories: Sharing Wordless Picture Books with Preschoolers. Children and Libraries, 19(4). 無料全文 / DOI
- 国立国会図書館 国際子ども図書館. 「子どものへや・世界を知るへや」. 文字のない絵本の紹介を含む利用案内
資料確認日:2026年10月13日









