この記事の要点
- 同じ絵本で大丈夫: 子どもが楽しんでいるなら、無理に毎回別の本へ替えなくて大丈夫です。好きな場面や言葉を、繰り返し味わう時間にも意味があります。
- いつもの読み方で: 毎回、新しい工夫やクイズを用意しなくても大丈夫。好きなせりふを一緒に言ったり、同じ絵を眺めたりして楽しめます。
- 疲れた日は短く: 「今日はここまで」と終えても構いません。子どもの気持ちと、大人の余力の両方を大切に、無理のない形を選びましょう。
目次
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「これ、もう一回」
読み終えたばかりの絵本を、子どもがまた差し出す。昨日も、その前の日も読んだ一冊です。「いつも同じ本でいいのかな」「もっといろいろな本を読んだほうがいいのかな」と、気になることはありませんか。
子どもがその一冊を楽しんでいるなら、無理に毎回違う本へ替えなくて大丈夫です。知っている場面で笑ったり、おなじみの言葉を一緒に言ったり。同じ本に戻る時間にも、子どもなりの楽しみがあります。
そして、読む大人が疲れた日は、短くしたり、今日はここまでにしたりして構いません。この記事では、主に未就学の子どもの「もう一回」と、無理なく付き合う方法を考えます。
同じ一冊を 繰り返し楽しむ意味がある
「もう内容を知っているのに、どうして?」と思ったら、次に読むとき、子どもがどの場面を待っているか見てみませんか。
毎回同じ絵を指す。同じ場面で笑う。お気に入りのせりふを先に言う。そうした姿があれば、その場面や言葉をもう一度楽しんでいると受け止められます。理由を説明してもらわなくても、「そこが好きなんだね」と一緒に眺める付き合い方もあります。

東京都の子育てに関する解説でも、お気に入りの絵本を何度も楽しむ読み方が紹介されています。同じ一冊を選ぶことも、絵本の楽しみ方の一つです。公的資料1
繰り返し読む中で、言葉に出会い直せることもあります。同じ話の繰り返しが、言葉を覚える助けになる可能性も示されています。「一度読んだら、次は必ず新しい本」と急がなくてよい手がかりです。研究1
新しい本を読む日も、いつもの本を読む日もあっていい。まずは、今その子が楽しんでいる一冊を、選択肢に残しておきましょう。
家で試すなら その日の親子に合う読み方を
まずは、いつもの読み方から。ここで紹介するのは、親子で無理なく楽しむための提案です。全部を取り入れようとせず、その日に合うものを選んでみてください。
いつもの読み方で始める
何度も読んでいると、大人は声色を変えたり、クイズを入れたりしたくなるかもしれません。でも、毎回新しい工夫を用意しなくても大丈夫です。まずは、いつもの調子で読んでみましょう。
子どもが絵を指したら、その絵を一緒に見る。「ここにも猫がいるね」と話し始めたら、少し立ち止まる。お話の続きを聞きたそうなら、そのまま読む。読み方を決め込まず、目の前の反応に合わせて変えてみてください。
親から話しかけたいときは、「これ、何色?」「さっき何をした?」と答えを求めるほかに、「この顔、おもしろいね」と自分の気づきを伝えることもできます。返事がなくても、質問を重ねなくて構いません。
言いたそうなところで 少し待つ
いつものせりふを子どもが口にしそうなら、ほんの少し待ってみる。言ったら一緒に続け、言わなければ大人が読む。そのくらいのやり取りを試せます。
「覚えているか確かめよう」と構える必要はありません。昨日は一緒に言ったのに、今日は黙って聞いている。それだけで、理解していない、楽しんでいないと決めつけずにいたいところです。
絵をじっくり見たい子には、ページをめくる前に待ってみる。どんどん進めたい子には、先を読む。同じ一冊でも、その日の読み方は選べます。
短く読む日があってもいい
時間や気力が少ない日は、始める前に「今日は短いお話を一つにしよう」「好きなページを一緒に見よう」と相談してみませんか。
途中で別のことに興味が移ったら、その日はそこで閉じる選択もあります。「最後まで読ませる」「何冊読む」といった目標を、毎回達成しなくてもよいことにしておくのです。
大人が疲れたときは 終わりを決めていい
同じお話を楽しむ子どもに付き合っているうちに、大人のほうが飽きることもあります。夕飯の片付けが残っていたり、きょうだいに呼ばれたり、自分も眠かったり。そんな状況も、読み聞かせを考えるときに含めてよいはずです。
「もう一回」を受け止めることと、毎回そのとおりに読むことは分けて考えられます。
こんな言い方を、その家庭の言葉に変えて使ってみてください。子どもがすぐ納得するとは限りません。切り上げたくて強い声になってしまったら、「さっきは大きな声になったね。今日は疲れているから、ここまでにしよう」と伝え直すこともできます。
読めない日に、埋め合わせの冊数を決める必要はありません。また読める日に、手に取るところから始めましょう。
大人が別の本を読みたくなったら、「私は今日はこれも読んでみたい」と伝えてもよいでしょう。子どものお気に入りに付き合う時間と、大人が選ぶ本を一緒に試す時間。その両方があっても構いません。
新しい本は お気に入りの隣に
同じ本を選び続けていると、新しい本を勧めるタイミングに迷うこともあります。そんなときは、お気に入りを片付けて入れ替えるより、選べる本を少し添える方法を試せます。
例えば、乗り物の絵本が好きなら、別の乗り物の本を。動物の表情をよく見ているなら、同じ動物が出てくる別のお話を。親が気になった本を「こっちもあったよ」と置くだけでもよいでしょう。どちらを読むか、その場で選べるようにしてみます。
手に取らなければ、いったん戻す。それでも読みたい本が変わらなければ、いつもの一冊に戻る。新しい本を借りたのに読まなかったとしても、急いで読ませ切ろうとしなくてよいのです。
迷ったら、図書館で「今はこの本を繰り返し読んでいます」と伝えて、似た楽しみ方のできる本を相談する方法もあります。本を増やすことが負担なら、今ある一冊で過ごす選択を残しておきましょう。
新しい一冊の候補には、文字のない絵本もあります。絵を眺めたり、気づいたことを話したりする文字のない絵本の楽しみ方も紹介しています。
今日 読める形で お気に入りを楽しむ
子どもが今日も同じ本を持ってきたら、読める日はまた開く。疲れていたら、読める範囲を伝える。新しい本が気になったら、隣に置いてみる。
「またこの本なんだね」。その一冊を、今日の親子に合う形で楽しめたら。それくらいのところから、付き合ってみませんか。
もっと知りたい方へ この記事の根拠
ここからは、繰り返し読むことを考える手がかりにした研究と公的資料を紹介します。本文の読み方や声かけは、家庭で楽しむための提案です。それぞれの方法を試すと同じ学習効果が得られる、と確かめたものではありません。
同じ話と異なる話を比べた実験
英国の研究では、英語を母語とする3歳児16人に、研究用の絵本を読みました。1週間に3回訪問し、その都度、一方のグループは同じ話を続けて3回、もう一方は異なる話を3冊聞きます。覚える対象は研究用につけた物の名前で、その名前を聞く回数はグループ間でそろえてありました。訪問ごとに、別のお話と名前を使っています。
その結果、名前に合う物を4つの絵から選ぶ課題では、同じ話を聞いたグループのほうが、異なる話を聞いたグループより、直後も後日の確認も成績が高くなりました。少なくともこの実験では、同じ言葉に出会うときの「お話の文脈」がそろっていることが助けになったと考えられます。研究1
ただ、この結果は日常の読み聞かせ全体を評価したものではありません。少人数で、用意された物の名前を理解できたかを調べた研究です。「語彙力が何倍になる」「同じ本だけ読めばいい」という話にはできません。
さらに、38の研究をまとめた分析では、お話を繰り返す回数と語の理解との関係には大きなばらつきがあり、効果がない可能性も残りました。読み方や調べ方が異なる研究をまとめた結果なので、先ほどの実験をそのまま否定するものでもありません。今のところ、反復が助けになる場合はありそうですが、どんな子にも同じ効果があるとは言い切れない、という受け止め方が適切です。研究2
英国の実験で3回読んでいたからといって、家庭でも3回にそろえる必要はありません。実験の回数は条件を比べるために決められたもので、家庭への推奨回数ではないからです。
園で見られた 子どものさまざまな反応
東京都内の公立幼稚園2園の4歳児クラスを継続して観察した研究でも、同じ絵本を読む中で、次の展開を先に言う姿や、せりふを一緒に言う姿が記録されています。一方、読み慣れたことへの不満も見られました。これは園での観察で、反復だけの効果を取り出した実験ではありません。それでも、同じ本への関わり方が一つではないことを伝えてくれます。研究3
絵本を楽しむという視点
文部科学省の幼稚園教育要領でも、絵本や物語に親しみ、想像する楽しさを味わうことが大切にされています。これは園の教育についての指針ですが、家庭で「何を覚えたか」だけに目が向いたときにも参考になる視点です。公的資料2
この記事の対象と研究の読み方
この記事は、主な実験・観察の対象に近い未就学児との読み聞かせを中心にしています。日本の家庭やほかの年齢、将来の成績への効果は、紹介した実験から直接判断できません。「何回、何分、何冊が正解」という基準も、今回の資料からは出せません。
絵本の好みや読み聞かせ中の反応だけで、子どもの発達の状態を判断するための記事ではありません。
参考文献と公的資料
- Horst, J. S., Parsons, K. L., & Bryan, N. M. (2011). Get the Story Straight: Contextual Repetition Promotes Word Learning from Storybooks. Frontiers in Psychology, 2, 17. DOI: 10.3389/fpsyg.2011.00017. 無料全文
- Flack, Z. M., Field, A. P., & Horst, J. S. (2018). The Effects of Shared Storybook Reading on Word Learning: A Meta-Analysis. Developmental Psychology, 54(7), 1334–1346. DOI: 10.1037/dev0000512. 大学公開の著者最終稿
- 並木真理子(2012)「幼稚園における絵本の読み聞かせの構成および保育者の動作・発話が幼児の発話に及ぼす影響」『保育学研究』50(2), 165–179. DOI: 10.20617/reccej.50.2_165. 論文情報・無料全文
- 東京都生涯学習情報「030 同じ絵本ばかりを繰り返し読んでいてもいいのでしょうか?」 解説ページ
- 文部科学省(2017)『幼稚園教育要領』第2章「言葉」、内容(9)。本文PDF、冊子16ページ
資料確認日:2026年10月13日









