この記事の要点
- お礼を言うだけで、人だと思っているとは決めない: 丁寧に話したい、返事が面白いなど、理由は一つとは限りません。気になったら本人の考えを聞けます。
- 親しみやすい声と、できることを分けて話す: 話しかけると返事をする仕組みでも、何でも分かるわけではありません。声の感じだけで、答えの正しさを決めないようにできます。
- 話してよい情報や、困ったときの相談先も確認する: 家族の秘密や他人の個人情報を気軽に話さず、困ったら大人に聞く。細かな設定の確認は、大人が担えます。
曲を流してくれたスピーカーに、子どもが「ありがとう」と言う。「人と機械の違いが分かっていないのかな」と気になることがあるかもしれません。
お礼の一言だけでは、子どもが何を考えているかまでは分かりません。言うのをやめさせる前に、話す機械をどう捉えているのか、一緒に話すきっかけにできます。
ここでは、主に家庭のスマートスピーカーなど、声で応答する機器を使う小学生との会話を考えます。
「どうして言ったの?」を、試験にしない
子どもが楽しそうに使っているときに、「返事がうれしかった?」「どんなふうに動いていると思う?」と聞く方法があります。毎回理由を説明させる必要はありません。
「機械なのに変だよ」と笑ったり、「お礼を言うから優しい子だね」と性格の評価にしたりせず、本人の言葉を聞けます。大人も便利な道具に思わず声をかけることはあります。話し方だけで理解を採点しなくて大丈夫です。
家庭で丁寧に話すことを大切にしたいなら、その方針を伝えることもできます。ただし、「お礼を言わないと機械が悲しむから」と、確かめられない気持ちを理由に義務づける必要はありません。
声の感じと、答えの中身を分ける
「人が作った仕組みで、声を処理して返事をする道具だよ」と説明し、身近な使い方から話せます。人のような声で話すことと、人と同じ仕組みで物事を分かっていることは、別に確かめたい点です。
子どもが「何でも知っている」と言ったら、気になる答えを一つ、本や公式の情報と見比べる方法があります。親も分からなければ、「今は私にも分からない。別のところで確かめよう」と言えます。
機器をわざと困らせて、何度も間違いを探す課題にする必要はありません。日常で答えが気になったときに、一つ確かめるくらいから始められます。

親しみを持つことと、何でも話すことは分ける
使っている機器やサービスについて、会話が保存されるか、誰が確認できるか、どのような設定があるかを、大人が公式の説明で確かめられます。製品や設定によって扱いが違うので、子どもに機械の仕組みを全て判断させなくて構いません。
家庭では、「住所や学校の詳しい予定、友だちの秘密などは、話す前に大人に聞こう」と、具体的に相談できます。親しみやすい返事があることだけを、秘密が守られる根拠にはしないようにします。
うまく使えず困ったり、返事で嫌な気持ちになったりしたら、使うのをやめて身近な大人へ話してよいことも伝えられます。音声アシスタントの機嫌を取る役を、子どもに任せなくて大丈夫です。
子どもの見方を聞いた研究から
AndriesとRobertsonの研究では、2022年にスコットランドの小学生へ調査を行いました。質問紙に答えたのは8〜11歳の166人で、28人へのグループ面接も行っています。ここでは、大学が公開する査読後の著者原稿を参照しています。研究の公開原稿
面接では、機器に気持ちがあるかもしれないと考えて丁寧に話す子もいれば、普段の話し方として失礼な言葉を避けたいと話す子もいました。機器が返事をしなくなるなどの結果を心配する声もありました。丁寧に話す理由を、一つにまとめられないことが分かります。
ただし、これは本人の回答を調べた研究で、家庭での実際の会話を直接観察したものではありません。機器へお礼を言うと対人関係がよくなる、または人と機械を混同するようになる、といった因果関係も調べていません。
調査は比較的生活条件のよい地域の2校を通じて行われ、質問には主に「Alexa」という名前を使っています。日本の全家庭や、現在のあらゆる対話型AIの利用を代表する結果ではありません。本文の声かけと家庭での確認事項は、この知見を手がかりにした編集部の提案です。
参考文献
- Andries, V., & Robertson, J. (2023). Alexa doesn’t have that many feelings: Children’s understanding of AI through interactions with smart speakers in their homes. Computers and Education: Artificial Intelligence, 5, 100176.
- 同論文の大学公開・査読後著者原稿。









