この記事の要点
- まず、何をしたい時間かを確かめる: 同じ作品を作るのか、同じ遊び方を楽しむのかで、手順の意味も変わります。
- 大人の癖までまねたら、短く説明する: 「そこは私が何となくしただけ」と伝えられます。まねたことを叱る必要はありません。
- 変えてよい部分と、安全の手順を分ける: 紙の飾り方は選べても、刃物や熱い物の扱いは別。分からない手順を自己判断で省きません。
折り紙を見せたら、大人が途中で紙を机に二回当てた動きまで、子どもがそっくりまねした。「そこまで同じにしなくても」と思う一方、自分で考えていないのだろうか、と気になることもあるかもしれません。
でも、動きを全部まねた姿だけで、考えていないとは決められません。子どもには、どの動きが完成に必要か、どこまでが遊びの約束か、まだ分からないことがあります。
ここでは主に未就学児との、折り紙や簡単な工作など、安全に試し方を変えられる場面を考えます。
「同じものを作りたい」と「同じようにしたい」
親は袋の形に折れればよいと思っていても、子どもは「大人と同じ動きをする遊び」を楽しんでいるかもしれません。
「同じ袋を作りたい? それとも、私と同じようにやってみたい?」と、本人の希望を聞いてみる方法があります。答えにくそうなら、手が止まるところや、楽しそうに繰り返すところを見ていても構いません。
同じ順番を守ること自体が、遊びの一部になる場面もあります。手遊び歌やダンスでは、動きがそろうのが面白いこともあるでしょう。物を早く完成させる役には立たなくても、一緒にする意味まで「無駄」と決める必要はありません。
大人がたまたました動きは、そう伝えられる
作品を作りたい場面なら、「ここを折ると、袋の底になるよ」と、動きと目的を短くつなげて見せられます。
反対に、紙を机に当てたのが大人の癖だったなら、「今、机に当てたのは何となくしただけ。袋を作るときは、しなくてもいいよ」と言えます。まねてしまったあとで「そこは違う」と責めるより、見本を出した側から説明を足す方法です。

説明しても、もう一度同じ動きをするかもしれません。それだけで「話を聞いていない」と受け取らず、本人が同じようにしたいのか、まだ必要だと思っているのか、様子を見られます。
研究でも、余分な動きを省くよう言われてなお、子どもがその動きをまねる場面が報告されています。ひと言伝えれば、すぐに省けるとは限りません。研究1
変えてみたいときは、選べるところを具体的に
「自由にしていい」だけでは、どこを変えられるのか迷うことがあります。安全な紙遊びなら、「模様は好きな色にできるよ」「持ち手を付けるかは選べるよ」と、実際に選べる部分を伝えられます。
子どもが自分なりに変えたときも、「省いたから賢い」「全部まねたからだめ」と順位を付ける必要はありません。同じにする、変えてみる、どちらを選んだかに関心を向けられます。
なお、刃物・火・熱い物・電源を使う作業や、衛生のための手順は、この試し方の対象にしません。見た目に役割が分からなくても、安全を守る働きがある場合があります。説明書や安全上の指示に従い、大人の確認なしに省かないでください。
研究では、手順の意味や場面が調べられている
研究でいう「過剰模倣」は、目的の結果を出すのに直接必要のない動きまで、まねることです。子どもの性格や能力に付ける名前ではありません。
Lyonsらの2007年の実験では、三〜五歳の子ども63人が、大人の操作を見て、初めての仕掛けから玩具を取り出しました。操作を見ない比較群62人より、不要な動きを多く行いました。別の29人を対象とする条件でも、余分な動きをしないよう明示したあとに模倣が残りました。研究1
一方、Keuppらの2015年の研究では、ドイツの研究チームが未就学児32人を対象に、見せた一連の活動をするよう求める場合と、結果だけを得るよう求める場合を比べました。各条件を二試行ずつ受けた29人の分析では、後者で不要な動きの模倣が少なくなりました。同じ実演を見ても、何をする場面かによって行動が変わる結果です。研究2
どちらも限られた道具を使う短時間の実験です。親の癖を説明する声かけや、日本の家庭での工作への効果を直接調べてはいません。まねる理由を一つに決めたり、手順を減らすほど創造性が育つと結論したりもできません。
家庭では、まず「何をしたいのかな」と確かめる。必要なら、見せた動きの理由を少し足す。そのくらいから、子どもと見本の受け取り方をすり合わせられます。
参考文献
- Lyons, D. E., Young, A. G., & Keil, F. C.(2007). The hidden structure of overimitation. PNAS, 104(50), 19751–19756. 著者研究室公開PDF・DOI
- Keupp, S., Behne, T., Zachow, J., Kasbohm, A., & Rakoczy, H.(2015). Over-imitation is not automatic: Context sensitivity in children’s overimitation and action interpretation of causally irrelevant actions. Journal of Experimental Child Psychology, 130, 163–175. 研究室公開PDF・DOI
資料確認日:2026年10月13日









