この記事の要点
- 「見たことがない」と「起こり得ない」を分ける: 珍しい形の建物などは、知らなくても実現できるかもしれません。すぐに正誤を決めず、何が気になったか聞けます。
- 起こり方を、一つだけ考えてみる: 「模様を描いたらできるかな」など、普段の物や方法とつなげて話せます。答えを知らなければ、そのまま確かめることにしても大丈夫です。
- お話は、空想のまま楽しめる: 読み聞かせの途中で、すべてを現実と比べなくてよいのです。「本当に?」と気になった場面だけ、短く話せます。
目次
お話に変わった建物や乗り物が出てくると、「そんなの、あるわけないよ」と子どもが言う。どこまで説明すればよいのでしょう。
そこで「想像力が足りないのかな」と心配する必要はありません。子どもが言う「ない」は、自分が見たことがないという意味かもしれませんし、その仕組みでは起こらないと考えているのかもしれません。
主に4歳ごろから小学校低学年の子との、物語や身近な話題のやり取りを考えます。信じさせることも、何でも疑わせることも、目標にしなくてかまいません。
何を「ない」と思ったのか、一つ聞く
例えば、カップの形をした建物が描かれていたとします。「建物はこんな形じゃないよ」と言われたら、「形がいつもの建物と違うんだね」と、気になったところを受け取れます。
その後で、「ふだんは見ないね。でも、外側をその形に作ることはできるかもしれないね」と話せます。子どもが知っている建物が四角いものばかりでも、その経験を間違いにする必要はありません。
「絶対にない?」と何度も問い直すより、「見たことがないんだね」といったん区切ることもできます。なぜそう思うかを、必ず説明させなくてよいでしょう。
「どうすればできる?」を、身近な方法につなげる
現実にできそうかを一緒に考えたいときは、どんな方法で起こるのかを一つだけ挙げられます。
水玉模様の飛行機なら、「飛行機の外側に模様を描く、ということかな」。不思議な色の紙なら、「白い紙に色をつけたのかもしれないね」。いつもと違う見た目でも、知っている作り方とつながる場合があります。
一方、物語でほうきが魔法だけで空を飛ぶ場面は、「このお話では、魔法で飛べるんだね」と読めます。珍しい見た目と、物語の魔法を、すべて同じ理由で説明しなくてもよいのです。
ここで出した建物や飛行機は、考え方を話すための例です。特定の建物や機体が実在すると伝える場合は、その写真や説明の出所を確かめます。「作れそう」と「実際にある」は別の問いだからです。

大人も分からなければ、答えを保留できる
子どもに聞かれると、その場で「ある」「ない」を決めたくなることがあります。でも、大人も仕組みを知らない物なら、無理に断言しなくてかまいません。
「私はまだ見たことがない。どう作るのかは分からないから、あとで確かめよう」と言えます。今すぐ調べる余裕がなければ、疑問を一つ覚えておく程度でも十分です。
見た目が本物らしい画像でも、それだけで実在が確かめられるわけではありません。調べる場合は画像だけを眺めて結論にせず、作った人や施設などの説明も読みます。
毎回、現実かどうかを確認しなくていい
子どもが物語を楽しんでいる途中なら、珍しいことや魔法が出るたびに「これは本当にはできません」と止める必要はありません。
「次はどうなるかな」と続きを楽しみ、子どもが現実との違いを気にしたときにだけ話すこともできます。空想のお話を読むことと、その出来事が現実に起こるかを確かめることは、同じ時間に全部しなくてもよいのです。
ここまでの声かけは家庭での提案です。次の研究で、これらの言い方の効果を直接比較したわけではありません。
研究では、珍しい出来事も「無理」と判断されることがあった
米国のShtulmanとCareyの研究では、4歳・6歳・8歳の子どもと大人に、普通の出来事、珍しいが可能な出来事、物理的に不可能な出来事を含むお話を示しました。
子どもも、普通の出来事と物理的に不可能な出来事を区別しました。その一方、大人が可能だと判断する珍しい出来事も、「起こらない」と答える傾向がありました。研究者は、起こり方を思いつきにくいことなどが関わる可能性を論じています。研究の原文PDF
ただし、回答の形式を変えた実験では結果も変わり、単純に「何歳なら区別できる」という基準にはできません。主に米国の白人・中流家庭の子どもによる、研究用のお話への判断です。日本の家庭での反応や、子ども一人の想像力を評価する材料にはなりません。
「そんなこと、ないよ」と言う声は、話し合うきっかけになります。見たことがないのか、仕組みが不思議なのか。大人も一緒に気にしてみるところから始められます。
参考文献
- Shtulman, A., & Carey, S.(2007)Improbable or Impossible? How Children Reason About the Possibility of Extraordinary Events. Child Development, 78(3), 1015–1032. 著者公開PDF(DOI: 10.1111/j.1467-8624.2007.01047.x)









