この記事の要点
- 全部知っていなくても大丈夫: 分からないことは、分からないと伝えて構いません。「一緒に本を見てみよう」も、疑問への付き合い方です。
- まずは、知りたい理由を一つ: 答えられるときは、短い説明から。最初から詳しく話し切ろうとせず、子どもの反応を見て続けましょう。
- 手が離せないときは、区切っていい: 今すぐ答えられない事情を伝え、余力があるときに一つ取り上げる。すべての質問を宿題にしなくて大丈夫です。
目次
「なんで雨の日は傘をさすの?」「なんで、この葉っぱだけ赤いの?」
答えたそばから、また「なんで?」。かわいいと思う日もあれば、夕飯の支度中に聞かれて「今はちょっと待って」と言いたくなる日もあります。知らないことを聞かれて、親なのに答えられない、と困ることも。
毎回、その場で正解を説明できる親を目指さなくて大丈夫です。知っていることは話す。分からなければ、一緒に調べる方法を探す。手が離せなければ、いったん区切る。子どもの疑問と、大人の暮らしの両方を大切にできる付き合い方を考えます。
この記事は、主に未就学の子どもとのやり取りを想定しています。声かけの例は、家庭で選べる実践案です。特定の言い方の効果が実験で確かめられている、という意味ではありません。
「なんで?」には、理由を知りたい気持ちがあることも
同じことを何度も聞かれると、「さっき答えたよね」と思うかもしれません。そんなとき、子どもが知りたいところと、自分が答えたところが少しずれていないか、見直す余地があります。
たとえば「なんで傘をさすの?」に「雨だから」と返したあと、もう一度聞かれたら。「雨にぬれないように、傘で雨をよけるんだよ」と、目的を少し足してみる。これは会話の一例ですが、同じ言葉を繰り返す代わりに、説明の中身を変える方法です。
子どもが理由を知ろうとして質問し、説明の内容に反応していることは、幼児を対象にした実験でも示されています。「なんで?」を、ただ会話を引き延ばしているだけ、と決めつけなくてよい手がかりです。研究1
もちろん、目の前の「なんで?」の意味を、研究だけで決めることはできません。「何が気になった?」と聞けそうなら聞いてみる。まだ言葉にできなければ、そのまま一緒に見てみる。そのくらいから始められます。
答えられるときは、短い説明から始める
聞かれると、つい関連する知識まで全部伝えたくなることがあります。でも、最初から小さな授業を完成させなくても構いません。
まず、聞かれたことに合う理由を一つ伝える。さらに聞いてきたら続きを話し、別の遊びに移ったらそこで終える。短さそのものを目標にするというより、子どもが今知りたいところに合わせて、話す量を調整する提案です。
研究1でも、ある程度詳しい説明にさらに情報を足したとき、子どもの満足を示す反応の追加的な増加は確認されませんでした。ただし「何秒」「何文字」がよい、と決まったわけではありません。研究1
「あなたはどう思う?」と聞き返すのも、一つの方法です。子どもが自分の考えを話したそうなときには、聞いてみてもよいでしょう。けれど、毎回考えを出してもらってからでないと答えられない、というルールにする必要はありません。答えを知りたそうなら、大人から話して構いません。
知らないときは、一緒に探すところから
「それは私も知らないな」「ちゃんとは分からないから、調べてみたいね」。知らないことを、知っているふりで埋めなくても大丈夫です。
その場に余裕があれば、家の図鑑を開く。今は本がなければ、次に図書館へ行ったときの話題にする。すぐ答えが見つからなくても、「この本には出ていなかったね」と、その日に分かったところまでにできます。

文部科学省に掲載された幼稚園の実践報告にも、分からないことを教師と一緒に図鑑や本で調べる場面が紹介されています。大人が答えを持っていることだけが、疑問に付き合う方法ではありません。公的資料1
日本の園を対象にした調査では、保育者が覚えていた子どもの疑問として、葉の色が変わる理由や、生き物の動きに関する問いなどが集められています。散歩中に目に入ったものも、一緒に調べる話題になりえます。研究2
小学生向けの資料ですが、国立国会図書館の国際子ども図書館には、本や人に聞くことなど、調べ方を紹介するページもあります。小さな子とは、大人が見て使えそうな方法を選べます。調べものの入り口
ただし、聞かれるたびに本を開く必要はありません。「一緒に調べよう」が、親の新しいノルマにならないように。その日に気になったことの中から、親子で扱えそうな一つを選ぶくらいでもよいでしょう。
忙しい日は、答え方を切り替える
火を使っているとき、出かける直前、自分も疲れているとき。落ち着いて答えられない時間はあります。そういうときは、今できることを短く伝える方法もあります。
どれも、毎回この通りに言わなければならない台本ではありません。口にしやすい言葉に変えてください。
「さっきは聞けなかったね。あれ、まだ気になってる?」と、余力が戻ってから話を戻すこともできます。質問を書き留めるのが好きな家庭なら、メモを一つ残しても。でも、記録も回収も義務にしなくて大丈夫です。
どこまで分かっている? 研究と資料の読み方
ここまでの声かけは、研究を参考にした編集部の提案です。「この返し方なら好奇心が伸びる」「答えを後回しにしても影響がない」と確かめられた方法ではありません。背景にした研究では、次のことが調べられています。
米国の実験:理由を含む答えに、子どもはどう反応したか
Frazierらの研究は、米国の4〜5歳児69人を対象に、不思議な場面などから生まれた問いに、大人が用意した答えを返す実験です。理由を含む説明には、含まない返答と異なる反応が見られました。この実験では、ごく短い説明より、もう少し詳しい説明のほうが、満足を示す同意や笑顔などの反応が多く見られました。一方、そこへさらに情報を足しても、こうした反応のさらなる増加は確認されませんでした。研究1
この結果は、理由を伝える中身に目を向ける手がかりになります。ただし、説明の長さと内容の詳しさを厳密に切り分けた研究ではなく、家庭での最適な答えの長さは決められません。限られた地域・背景の子どもを対象にした実験で、長期の好奇心や学力への効果、すべての質問に答える必要性を調べたものでもありません。
日本の調査:園で生まれた、生き物への疑問
田川の研究では、九州地方の一つの県にある45園、保育者151人の回答から、3〜5歳児の生物に関する疑問292件を整理しています。これは子ども292人を追跡した調査ではなく、保育者が印象に残った問いを振り返って報告したものです。研究2
身近な生き物に向けられる問いの例を知る資料になりますが、日常の全質問の傾向や、家庭でどの答え方がよいかは分かりません。文部科学省掲載の実践報告も、一緒に調べる場面の参考であり、その方法の効果を比較実験で証明した資料ではありません。
親が全部答えるより、その日にできる付き合い方を
子どもの「なんで?」を大切にすることと、親がいつでも何でも説明することは、同じではありません。
今日は、知っている理由を一つ話せた。別の日には、知らないことを一緒に本で探せた。忙しくて、いったん区切った日もある。その日の親子に合う返し方を選んでいきましょう。
参考文献・資料
参考資料へのリンクは別タブで開きます。
- Frazier, B. N., Gelman, S. A., & Wellman, H. M.(2016). Young Children Prefer and Remember Satisfying Explanations. Journal of Cognition and Development, 17(5), 718–736. 無料全文(著者最終稿) / DOI
- 田川一希(2023). 幼児が興味を持つ生物の種類と特徴の傾向 ―幼児の疑問に着目して―. 『生物教育』64(3), 203–209. 論文情報・無料全文へのリンク
- 鳥取大学(平成29年度). 『幼稚園における指導の評価の在り方に関する研究』. 文部科学省掲載、事例125「どっちがいい?」、冊子105ページ(PDF111ページ目). 資料PDF
- 国立国会図書館 国際子ども図書館. 『しらべる・まなぶ・よむ』小学生向けサイト. しらべものの入り口
資料確認日:2026年10月13日









