この記事の要点
- 「忘れないで」に、見える手がかりを添える: あとで出す物や返す物は、使う場面で気づける置き方を一緒に考えられます。
- メモを書くだけでなく、見る場所も決める: 手帳、連絡袋、机など、本人が実際に見るところへ。増やしすぎず、一つから試せます。
- 使えなかったら、責める前に仕組みを見直す: メモに気づかなかったのか、何をするか分からなかったのか。置き場所や言葉を変える手もあります。
目次
「帰ったらプリントを出してね」「明日、この本を返そうね」。その場では返事をしていたのに、あとで忘れてしまう。何度も続くと、「ちゃんと聞いていた?」と言いたくなることがあります。
小学生の忘れ物を考えるときは、覚えておくことに加えて、必要な場面で思い出す手がかりにも目を向けられます。メモや物の置き場所を使うのは、そのための一つの方法です。
ただ、メモを渡しただけで使いこなせるとは限りません。「忘れそう」と分かることと、忘れないための準備を自分ですることには、違いがあります。
何をするかと、いつ気づくかを一緒にする
たとえば、学校から持ち帰ったプリントを出し忘れるなら、「プリント」という一語より、「帰ったら連絡袋を開く」と、することが分かる言葉にしてみます。
そのメモを、帰宅後にかばんを置く場所で見られるようにする。「何をするか」と「どこで気づくか」を組み合わせる家庭での工夫です。文字が読みづらければ、連絡袋の簡単な絵を添える方法もあります。
返す本なら、使ってよい袋にまとめ、持っていくかばんのそばへ置く。本そのものが手がかりになるので、メモをもう一枚増やさずに済む場合もあります。通路をふさいだり、踏んだりしない場所を選びます。
これは「決まった場所が正解」という話ではありません。大人には目立って見えても、子どもはそこを通らないかもしれません。「帰ったら最初にどこへ行く?」と聞くと、置き場所を考える材料になります。
メモを作るところから、全部任せなくていい
「忘れそうなら自分で書いておいて」と言われても、何を、どこへ書けば使えるのか迷うことがあります。
初めて使うなら、一件だけ一緒に準備してみます。「連絡袋を開く、で分かるかな」「この場所なら見る?」と確かめる。書くのは大人でも、本人でも構いません。きれいな管理表を完成させる必要はありません。

本人にすでに使っている手帳や連絡帳があるなら、別の道具を増やす前に、そこを使えるか見てみます。学校で使う場所や物に手を加えるときは、学校の決まりも確かめましょう。
メモを使ったあとに「覚えていたか、抜き打ちテスト」をする必要もありません。できた用事は消す、紙を外すなど、次に必要なことが見える状態に戻せます。
うまく働かなかったときの、三つの確かめ方
以下は編集部による生活上の提案です。研究で試した画面上の手がかりを、そのまま家庭で再現するものではありません。
メモを見ていたのにできなかった場合も、忘れたとは限りません。しまう場所が開けられなかった、物が見つからなかった、急いで別のことへ移った。本人に聞ける範囲で、途中の事情を確かめます。
毎日の持ち物全部を親が点検する仕組みに広げなくても、困っている一件から試せます。本人が使いたくないときは、物をまとめる、用事をその場で済ませるなど、別のやり方も考えられます。
子どもの研究では「難しさが分かる」と「準備する」に差があった
Redshawらの2018年の研究では、オーストラリアで集めた約7〜13歳の子ども63人が、タブレットの課題に参加しました。数字の付いた丸を順番に動かしながら、指定された丸だけは別の方向へ動かす、という課題です。
覚える特別な指示が一つのときと三つのときを比べました。後半には、指定された丸をあらかじめ移しておき、あとで気づくための手がかりにする方法を、研究者が説明して見せています。
参加した子どもは年齢を問わず、三つの指示のほうが難しいと予想していました。一方、難しい条件で手がかりをより多く使い分ける傾向は、年長の子どもほど強く見られました。年少の子どもも手がかりは使っており、「小さい子はメモを使えない」という結果ではありません。原著研究
この研究が示唆するのは、忘れやすさに気づくだけで、必要な準備まで自動的にできるとは限らないという点です。「忘れるって分かっていたでしょう」の先に、一緒に手がかりを用意する余地があります。
メモで忘れ物がなくなると、決まったわけではない
実験は短い時間の画面上の課題です。学校でプリントを提出する、翌日に本を持っていくなど、日をまたぐ生活場面を調べたものではありません。家庭のメモの書き方や、親が手伝う効果も検証していません。
また、手がかりを使える段階は、使えない段階のあとに行われました。後半の成績がよかったことを、手がかりだけの効果として切り離すことはできません。年齢の違いも、ひとりの子を何年も追った結果ではないため、「何歳ならひとりで管理できる」という基準にはなりません。
家庭では、能力を測るためよりも、目の前の用事を進めやすくするために使えます。一度でうまくいかなかったら、紙を増やす前に、見る場所や言葉が本人に合っていたかを確かめる。それでも難しければ、大人が一緒に行う方法へ戻せます。
忘れ物が繰り返されて学校生活で困っているときは、担任に、家と学校で使える手がかりを相談してもよいでしょう。この記事の方法だけで対処し続けたり、忘れた回数から子どもの性格を決めたりする必要はありません。
「次は覚えておいてね」に、一つ見える助けを添える。親も子も使いやすい形を、必要な場面だけ選べます。
参考文献
- Redshaw, J., Vandersee, J., Bulley, A., & Gilbert, S. J. (2018). Development of Children’s Use of External Reminders for Hard-to-Remember Intentions. Child Development, 89(6), 2099–2108. DOI: 10.1111/cdev.13040
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