この記事の要点
- 家の言葉を、急いで日本語だけに替えなくていい: 親子が話しやすく、気持ちを伝え合える言葉を大切にできます。家庭ごとの使い方を考えましょう。
- 一つの場面で、家族の言葉を楽しむ方法もある: 写真を見たり、昔の話をしたり。毎回言い直させる練習にせず、内容を一緒に楽しめます。
- 園や学校で必要な支援は、別に相談する: 家で話す言葉と、集団生活や授業で困る場面を伝えます。家庭だけで両方の言葉を教え切ろうとしなくて大丈夫です。
目次
園や学校では日本語、家では別の言葉。「学校で困らないよう、家でも日本語にしたほうがいいのかな」と迷うことがあります。
家族の中で、話しやすい言語が一人ずつ違うこともあるでしょう。ここでは、複数の言語が身近にある家庭で、日々の会話と園・学校での支援をどう考えられるかを紹介します。
まずは、家族が話しやすい言葉を確かめる
親が経験したことや、うれしかったことを自然に話せる言葉。子どもが質問したり、分からないと言えたりする言葉。家庭で使う言語を考えるときは、「何語なら有利か」だけでなく、実際に話し合えるかも手がかりになります。
文部科学省が公開する保育者向け研修資料は、親子が家庭の言語を大切にできるよう支えることを説明し、家庭で二つ以上の言語が使われる場合も想定しています。研修資料
「家では絶対にこの言語だけ」と、すべての家庭に同じ決まりを当てはめる必要はありません。誰と、どんな話をするときに伝わりやすいかを、今の生活に合わせて考えられます。
言葉を守る時間が、毎回の練習にならなくてもいい
例えば、家族の写真を見ながら「ここには誰がいる?」と話す。親が子どものころにしていた遊びを教える。子どもが興味を示した食べ物の名前を、一緒に言ってみる。いつもの生活の中にも、家族の言葉を使う場面があります。

子どもが日本語で返事をしたときに、すぐ会話を止めて別の言葉で言い直させなくても構いません。まず話の中身を受け取り、親が話しやすい言葉で続ける方法もあります。お互いに伝わらない部分は、写真や身ぶり、分かる別の言葉を添えて確かめられます。
これは会話の選択肢で、特定の方法だけで二つの言語が同じように身に付くという約束ではありません。子ども自身が使いたい言葉や、話したい内容も聞きながら選びましょう。
日本語で困る場面は、園や学校と一緒に考える
家で別の言語を使うことと、園や学校で日本語を学ぶ機会を持つことは、両方大切にできます。
先生には、「家では祖父母とこの言葉で話す」「日常の会話はできるが、持ち物の説明が分かりにくいようだ」など、場面を具体的に伝えられます。学校での雑談ができることと、授業に出てくる言葉や説明を理解することは、同じではありません。
「家庭では何を手伝えるか」「園や学校では、どんな方法で説明しているか」を尋ねてみましょう。保護者自身が日本語の説明を理解しにくい場合も、通訳や分かりやすい資料など、利用できる方法を確認できます。
家庭だけで解決しようとせず、学校や地域の相談先とつながるための質問です。利用できる支援は、自治体や園・学校によって異なります。
研究は、家庭の言語と育ち方の違いを調べている
米国の2014年の研究は、英語だけを使う家庭の子31人と、英語・スペイン語に触れる家庭の子26人を、2歳になる少し前から4歳ごろまで追いました。家庭で使う言語と、子どもが話せる単語の関係を調べています。研究の原文
家庭で英語を多く使うことと英語の語彙との関係は、親の言語背景によって異なりました。二つの言語での育ち方も一様ではありませんでした。家庭の言語を多数派の言語に替えれば、どの子も同じように伸びると示す結果ではありません。
ただし、対象は少人数で、保護者の教育水準が高い家庭が多く、日本語は調べていません。無作為に家庭の言語を割り当てた研究でもなく、「この言葉を使ったから、この結果になった」と因果関係は断定できません。話せる単語の検査だけで、理解できる内容や気持ちの伝え方まで分かるわけでもありません。
二つの言葉を、親だけの責任にしない
家族の言葉は、覚える単語の一覧だけではありません。親戚と話す、思い出を聞く、自分の考えを伝える。そのために使える言葉でもあります。
どちらの言語も常に同じように話すことを、家庭の達成目標にしなくてかまいません。家での会話を続けやすくすることと、外で必要な支援を探すことを、並べて考えられます。
この記事は、言葉の発達の遅れや原因を判断するためのものではありません。日々のやり取りで気になることは、複数の言語を使っている事情も含めて、園・学校や地域の相談先へ伝えてください。「二つの言語だから」と一つの理由だけで決め付けずに相談できます。
参考文献・資料
- Hoff, E., Rumiche, R., Burridge, A., Ribot, K. M., & Welsh, S. N.(2014)Expressive Vocabulary Development in Children from Bilingual and Monolingual Homes: A Longitudinal Study from Two to Four Years. Early Childhood Research Quarterly, 29(4), 433–444. 出版社・DOI / 公的アーカイブ
- 文部科学省公開「外国人幼児等の受入れに関する研修1–3 テキスト:言語・文化的に多様な背景を持つ子どもたちが共に過ごせる保育」第4節。原文PDF









