この記事の要点
- どちらか一つを選ばせなくていい: 「楽しみも、さみしいもあるんだね」と、子どもが口にした二つをそのまま受け取れます。
- 気持ちの名前より、場面を一つずつ聞く: 「何が楽しみ?」「どのことがさみしい?」と、別々の理由を聞けます。答えが出なければ、そこで止められます。
- 今できることを、一つ選ぶ: 新しい場所の準備をする、会いたい人に伝える、今日は話さない。二つの気持ちを消さずに、次の行動を考えられます。
目次
引っ越し先の部屋は楽しみ。でも、近所の友だちと離れるのはさみしい。休みのお出かけはうれしいけれど、家に残る家族にも会いたい。
子どもからこうした言葉が出たとき、「じゃあ、行きたいの? 行きたくないの?」と一つに決めたくなることがあります。けれど、予定を選ぶことと、気持ちを一つに絞ることは分けて考えられます。
園児後半から小学生くらいの子と、楽しみとさみしさなど、異なる気持ちを話す場面を考えます。
「二つあるんだね」までで、いったん受け取る
子どもが「楽しみ。でも、さみしい」と話したら、まずはその言葉を返せます。
「楽しみも、さみしいもあるんだね」。ここで、どちらの気持ちが本物かを決める必要はありません。「楽しみなら、さみしくないはず」と、一方を消さずに聞けます。
反対に、子どもが「楽しみ」とだけ言ったときに、「本当はさみしいでしょう」と二つ目を足さなくても構いません。いくつの気持ちを言えるかを確かめる会話ではなく、今、本人が伝えたいことを聞く時間です。
「何について?」を、一つずつ聞く
同じ出来事の中でも、楽しみなところと気がかりなところが違う場合があります。
たとえば、「新しい公園で遊ぶのが楽しみ」「今の友だちと毎日会えなくなるのがさみしい」。こうして話せれば、大人も何を一緒に考えればよいかが分かります。
「何が楽しみなのかな」と聞いて、話が続くようなら「さみしいのは、どんなこと?」と聞けます。二つを続けて質問する必要はありません。片方の話をして終わっても構いません。
まだ言葉にしにくければ、行き先の写真や持っていく物を見ながら、指さしで教えてもらう方法もあります。大人が表情だけで気持ちを断定せず、「これのことかな。違ったら教えてね」と確認できます。

気持ちをなくす前に、できることを探す
さみしいと言われると、「きっとすぐ楽しくなるよ」と励ましたくなるかもしれません。先の気持ちはまだ分からなくても、今できる小さな相談はできます。
「友だちに、何か伝えておきたい?」「新しい場所で、先に見ておきたいところはある?」。楽しみのための準備と、別れのための準備を、両方残しておけます。連絡や訪問を約束する場合は、大人同士で実現できるか確かめてからにします。
気持ちを十分に説明できたら行動できる、という順番でなくても大丈夫です。話さず一緒に荷物を選ぶ、今日はいつもどおり遊ぶ、という過ごし方も選べます。
同時なのか、順番なのかを確かめすぎない
「さっきはうれしくて、今はさみしい」ことも、「どちらもある」ことも、本人の話として聞けます。日常の会話で、二つの感情がまったく同じ瞬間に起きていたかまで答えさせる必要はありません。
また、絵本の登場人物について「うれしいし、さみしいと思う」と話せても、自分のことは話したくない日があるかもしれません。他の人の気持ちを考えることと、自分の気持ちを言葉にすることを、同じ課題にしないようにできます。
ここまでの声かけや準備の例は、編集部による一般的な提案です。次の研究で、これらの対応の効果を確かめたわけではありません。
研究でも、「分かる」と「自分の気持ちを話す」は分けられた
Larsenらは、米国テキサス州の公立学校3校で、5〜6歳、8〜9歳、11〜12歳の計105人を調べました。父と娘の喜びと別れが重なるアニメ映画の一場面を見てもらい、自分がどう感じたか、登場人物がどう感じたかを、別々に質問しました。
研究では、二つの感情を答えたか、自分から答えたか、同時に感じたと答えたかも分けて集計しています。登場人物に二つの感情があると答えた子の方が、自分にも二つの感情があったと答えた子より多くなりました。原著論文
ただし、一つの映画を見た後の言葉による回答です。質問は自分の気持ち、登場人物の気持ちの順に固定され、追加の問いもありました。著者らも、幼い子が言葉で報告しにくかった可能性を挙げています。「話せないから感じていない」「この年齢なら二つ言えるはず」とは判断できません。年齢の違う子を比べた研究で、親の聞き方による成長を示したものでもありません。
子どもが二つの気持ちを持ち出した日は、どちらかを消して前向きにさせるより、「それぞれ、何のことだろう」と一つずつ聞く。そのくらいの会話から始められます。
参考文献
- Larsen, J. T., To, Y. M., & Fireman, G.(2007)Children’s Understanding and Experience of Mixed Emotions. Psychological Science, 18(2), 186–191. 著者研究室公開全文(DOI: 10.1111/j.1467-9280.2007.01870.x)。









