この記事の要点
- まず、何を終わらせにくいのか見る: 作り途中なのか、しまう場所が分からないのか。「片付けて」を繰り返す前に、止まっているところを確かめます。
- 残す物と戻す物を、具体的に分ける: 置いておける作品は場所を決め、使わない部品は箱へ。家の都合に合う小さな区切りを一緒につくれます。
- 全部ひとりで終えることを、毎回の条件にしない: 子どもが車を集め、大人が棚に戻すなど、分担してもかまいません。急ぐ日は大人が多く引き受ける方法もあります。
目次
夕飯の前、床に積み木やおもちゃの車が広がっている。「そろそろ片付けよう」と声をかけても、子どもは動かない。何度も言ううちに、大人の声も強くなってしまうことがあります。
このとき、子どもが「片付け」という言葉を知らないとは限りません。遊びの続きをしたい、作品を壊したくない、どこから始めればよいか分からない。目の前で起きていることによって、手を貸す場所は変わります。
家での片付けを、毎回のしつけの成果を確かめる時間にしなくてもよいでしょう。通り道を空ける、食事の場所をつくるといった、そのとき必要なことから考えられます。
片付けの前に、遊びがどこまで進んだか見る
まだ熱中しているなら、「今、何を作っているところ?」と一度見てみます。長い説明を求めなくても、走らせている途中か、最後の部品を付けたいのかが分かるだけで、区切りを相談しやすくなります。
「この車を車庫に入れたら、ご飯の場所を空けよう」「屋根ができたら、続きを置く場所を決めよう」。時間に余裕があるときは、終わりを具体的な動作にして伝える方法があります。何分前に知らせれば必ず動く、という決まった正解があるわけではありません。
すぐ食卓を使う必要があるなら、その事情も短く伝えます。「まだ作りたかったね。ここでご飯を食べるから、今は移そう」。本人が納得するまで、いつまでも待たなければならないということではありません。
ここで紹介する声かけや分担は、編集部による家庭での工夫の例です。後半で紹介する研究で、この言い方の効果を実験したわけではありません。
作品を残すか、全部戻すかを一緒に決める
片付けを始めた途端に子どもが嫌がるなら、「これを崩すのは嫌だった?」と聞く余地があります。置いておける場所があれば、作品は棚の一角に残し、周りの使っていない部品だけ戻すこともできます。
残せる量は、家の広さや一緒に暮らす人の都合によって違います。「何でも残してよい」と約束せず、「この場所に収まる分」「明日の夕方まで」など、守れる範囲を相談します。写真を撮ってから崩す方法もありますが、写真で気持ちが切り替わると決めつける必要はありません。

置き場所がないときは、残したい気持ちを聞いたうえで、片付けることもあります。「全部は置けないから、この部分を外すのを手伝うね」と、必要な作業を具体的に示せます。
残す作品は、通り道や出入り口をふさがず、落ちたり倒れたりしない場所へ。小さな部品は、幼いきょうだいの手が届くところに残さないよう、大人が最後に確認します。
「全部」から、今戻す一種類へ
床いっぱいのおもちゃを前に、何もしていないように見える。そんなときは、片付ける対象と行き先を一緒に示してみます。「車をこの箱に集めよう」なら、今することが一つになります。
大人が想像する細かな分類を、最初から全部守ってもらわなくてもかまいません。毎回迷う箱があるなら、入れやすい場所か、ふたを開けられるか、似た物の置き場所が分かれていないかを見直す余地があります。
「一緒にすると、いつまでも自分でできないのでは」と心配になるかもしれません。ただ、このあと紹介する研究は、手伝いを減らせば家庭の片付けが早く身につくと示したものではありません。日によって、集めるところだけ任せる、箱を支える、一緒に全部戻すといった分担を選べます。
毎回大人が疲れ切るなら、遊び道具を広げる場所や、片付ける時点を見直すことも候補です。家中を一度に整えようとせず、食卓や通り道など、その日に必要な場所を先に空けてもよいでしょう。
国内の園の観察では、慣れとともに始め方が変わった
永瀬・倉持の研究は、東京近郊の公立幼稚園で、3歳児クラス30人と4歳児クラス28人の片付け場面を調べました。2008年4〜7月に観察し、条件のそろう日を各月1日ずつ選んで、映像を分析しています。原著の方法・結果
両クラスとも、4〜5月より6〜7月のほうが、保育者の全体への合図のあと、自分から片付けを始めた行動の割合が高くなっていました。ここでいう「自分から」は、誰にも言われる前に片付けた、という意味ではありません。全体への片付けの合図はあり、友だちの動きを見て始める姿も記されています。
また、映像で手が止まっているように見えても、次に片付ける物を探しているのか、何をすればよいか分からないのかまでは、はっきり区別できない場面がありました。
この観察は、動いていない姿だけから気持ちを決めつけず、何が必要かを確かめる見方につながります。ただし、特定の声かけや収納方法の効果が証明されたわけではありません。
園でできることと、家での片付けは同じ条件ではない
研究は一つの園の二つのクラスが対象で、年齢、園での経験、担任や部屋の違いを切り分けられません。家庭の片付けや、その後の習慣を追跡した研究でもありません。
園には友だちの動きや毎日の流れがあり、家には家族ごとの時間や置き場所の都合があります。「園でできるのだから、家でも同じようにできるはず」と比較する材料にはしにくい結果です。
今日の片付けで考えたいのは、どれだけ早く、ひとりで終えたかだけではありません。遊びのどこで区切るか、何をどこへ戻すか、大人はどこを手伝うか。必要な場所が空き、次の生活へ進める形を、親子のその日に合わせて探してみましょう。
参考文献
- 永瀬祐美子・倉持清美(2011)集団保育における幼児の生活習慣行動の習得過程:「片付け場面」に着目して. 日本家政学会誌, 62(11), 735–741. DOI: 10.11428/jhej.62.735.
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