この記事の要点
- 「あれ」がどれか分からない、と具体的に返す: 「ちゃんと説明して」より、「赤い車と青い車、どっち?」と迷っている部分を伝えられます。
- 色・形・場所のうち、一つを足してみる: 「青い車」「机の上の本」など、その場で区別できる言葉を大人から示しても構いません。
- 伝わったら、言い直しの練習を続けなくていい: 指差しや見せる方法でも目的は果たせます。毎回、完全な文章に直させる必要はありません。
子どもに「あれ取って」と言われたけれど、机にはおもちゃがいくつもある。「あれじゃ分からないよ」と返すと、同じ言葉がもう一度返ってくる。こんなとき、どう聞き返せばよいのでしょう。
相手に必要な情報を、一緒に一つ足す方法があります。この記事は主に4〜8歳ごろの子との日常会話を想定していますが、うまく伝わるかを年齢のテストにするものではありません。
大人が分からないところを、狭く伝える
「もっと詳しく」とだけ言われても、どの情報が足りないのかは分かりにくいことがあります。
車が二台並んでいるなら、「車は分かったよ。赤いのと青いの、どっち?」と聞けます。車の話だと分からなければ、「本のこと? 車のこと?」と一段手前から確かめられます。
大人の予想が違っていたら、「その二つじゃなかったんだね」と戻れば大丈夫です。最初の聞き返しで、必ず当てる必要はありません。
区別に使える言葉を、一つ示す
「青い車だったんだね」。物を渡しながら、区別に使えた言葉を大人が添える方法があります。子どもが自分で説明するまで、必要な物を渡さず待ち続ける必要はありません。
同じ色が二つあれば、色だけでは決まりません。「屋根のある車」「棚の上の車」など、その場で見分けられる特徴へ替えます。一度に色も形も大きさも全部言わせなくて構いません。

手作りのおもちゃや見慣れない形なら、決まった名前がなくても、「橋みたいな形のほう」で通じるかもしれません。相手が同じ物を思い浮かべられるか、やり取りしながら確かめられます。
指差しや、見せる方法も使える
言葉を探して止まっていたら、「指で教えてもいいよ」と言えます。一緒に物を見る、手に取って見せるなど、使える方法は言葉だけではありません。
ただし、大人が別の部屋にいると、指差しは見えません。「今は見えていないから、どこにある物か教えて」と、状況を短く伝えられます。大人が手を離せないなら、会話をいったん区切り、あとで一緒に見てもよいでしょう。
大人の「あそこに置いて」も同じです。子どもが迷っていたら、「テーブルの上の、かごの中だよ」と情報を足せます。子どもだけが上手に説明するための課題にしなくて大丈夫です。
通じたところで、用事に戻っていい
伝えたい物が分かったら、「これだったね」でやり取りを終えられます。「最初から全部言ってごらん」と、毎回言い直してもらう必要はありません。
短い言葉でも、同じ物を見ていて通じる場面なら、そのままで十分なこともあります。長く話すこと自体を目標にせず、分からなかったときだけ必要な情報を足す、と考えられます。
研究では、親子が呼び方をすり合わせていた
Leungらの2025年の論文の実験1では、米国の4歳・6歳・8歳の子どもと親、計63組を分析しました。二つの図形から相手に目的の一つを選んでもらう課題で、親子が説明する役と選ぶ役を交代しました。
若い年齢の子の親ほど、確かめるためのやり取りを多く行っていました。子どもが、親の出した呼び方を後のやり取りに取り入れる様子も見られました。研究本文
ただし、これは知らない図形について、別々の画面を見ながら言葉で伝える課題です。日常の指差しや物を渡す場面そのものではありません。また、実験1で親の声かけを無作為に割り当てたわけではなく、「この聞き返しを使えば言語能力が伸びる」という効果は示していません。
本文の車や本の例は、編集部の提案です。伝わらない場面があっても、それだけで子どもが相手の気持ちを考えていないとは決められません。分からないところを具体的に伝え、一緒に言葉を探せます。
参考文献
- Leung, A., Yurovsky, D., & Hawkins, R. D.(2025)Parents spontaneously scaffold the formation of conversational pacts with their children. Child Development, 96(2), 546–561.









