この記事の要点
- 何が「特別」に見えたのか、先に聞く: 道具が違うこと、先生と話す時間、自分も困っていること。気になった点を一つ確かめられます。
- 同じ活動をするために、手助けが違う場合がある: 「同じ物を同じ数」だけでなく、参加に必要な道具や方法という見方を添えられます。
- ほかの子の事情を調べる必要はない: 診断名や家庭のことを説明させず、自分の子に必要な相談は別にできます。
目次
「あの子だけ違う道具を使っていいんだって」「先生がいつも手伝ってる」。そう聞くと、親は「ずるいなんて言わないの」と急いで止めたくなるかもしれません。
園児から小学生との会話で、まずは「どのところが気になった?」と聞けます。そのうえで、「同じことを楽しんだり、勉強したりするために、使う物や手伝い方が違うこともあるよ」と、別の見方を添えられます。
「特別扱い」と決める前に、見えたことを聞く
子どもが知っているのは、教室の一場面だけかもしれません。席、使う道具、大人の声かけなど、何が違って見えたのかを聞きます。
「先生はその子ばかり好きなんだ」と言っても、すぐに事実として受け取らなくて大丈夫です。「先生が長くそばにいたのが気になったんだね」と、見たことに戻って聞けます。
その中に「自分も分からなかったのに、聞けなかった」「同じ道具を使ってみたい」という、自分の希望が隠れている場合もあります。「あなたは何をしてほしかった?」と尋ねる余地を残します。
ほかの子への手助けを認めることと、自分の子の困りごとを後回しにすることは、セットではありません。二人を比べず、それぞれに必要なことを考えられます。
同じ活動でも、使う方法は一つではない
例えば、一緒に絵を描くとき、細い鉛筆をそのまま持つ子も、持ちやすくする道具を使う子もいます。目指しているのは、全員の机を同じ見た目にすることだけではなく、それぞれが描く活動に参加できることです。
「同じ道具でないと、同じことをしたと言えないのかな」と、大人が考え方を示せます。ただし、子どもに正しい答えを言わせる問答にしなくても構いません。
身近な例なら、同じ本の文章を小さな文字で読む人、大きな文字で読む人、音声で聞く人がいる、と話せます。「どれが楽で、どれが偉い」と順位をつけず、情報に近づく方法として扱います。
ここで大切にしたいのは、他人の体や苦手をその場で観察・判定することではありません。「違う方法を使う理由が、外から全部見えるとは限らない」と、分からない部分を残しておけます。

分からない事情を、本人に説明させなくていい
「どうしてあの子だけなの?」と聞かれたら、親が事情を知らないまま病名や理由を想像して答える必要はありません。「その子の詳しいことは、私にも分からないよ」で大丈夫です。
友だちに診断名を尋ねたり、保護者に家庭の事情を説明してもらったりしなくても、手助けの考え方は話せます。本人の前で「この子はできないから」と紹介する形も避けられます。
先生に聞く場合は、「ほかの子の詳しい事情を教えてください」ではなく、「道具や手伝い方の違いについて、家庭ではどんなふうに説明するとよいでしょう」と、教室全体の考え方を尋ねる方法があります。
自分の子が困っているときは、「うちの子も、この場面で進められなかったと言っています」と、本人の困りごとを具体的に伝えます。支援を受ける理由を、友だちより大変だと証明する競争にする必要はありません。
自分の希望も、別の話として聞ける
以下は、家庭で話すための編集部の例です。研究で効果を確かめた声かけの組み合わせではありません。その日に話せる一つを選べます。
「ずるい」と言ったことだけで、思いやりがない子だと決める必要はありません。一度の会話で納得しなくても、「同じにすること以外にも考え方がある」と置いておけます。
また、「手伝いが必要な子だから、あなたがいつも譲って」と役割を固定しなくてよいでしょう。誰かの参加を支える工夫を、大人の責任まで含めて考えます。子ども同士の善意だけに任せる話ではありません。
研究では、必要な道具を多く渡す場面があった
Landwehrmannらの2024年の研究では、ドイツの園から募集した3〜6歳の子ども82人が、人形に道具を分ける課題に参加しました。実際の年齢範囲は42〜81か月です。参加条件は、診断や園での特別な支援がないことでした。
人形には、描く・話を聞くという活動への参加のしやすさに違いがありました。実験者は、鉛筆の補助具などの同じ道具二つについて、一つより二つのほうが役立つと説明しました。子どもは、一つずつ渡すか、片方へ二つ渡すかを選びました。原著全文
集団平均では、その道具を必要とする人形へ、半分より多く配る結果が見られました。子どもは、いつも同じ数にすることだけを選んだわけではありません。
ただし、人形と明確な説明を使った課題で、子ども自身の持ち物を譲る場面ではありません。実際の友だちへの態度や、家庭での説明の効果を検証した研究ではありません。特定の道具の治療・支援効果を確かめたものでもなく、登場する道具を買えばよいという意味ではありません。
一つの国の限られた参加者で、障害のある子自身の判断を調べた研究でもありません。「幼児なら分かるはず」と、目の前の子の理解を測る基準にはできません。
同じ活動に参加するために、同じではない手助けを使うことがある。親子の会話では、その考え方を少しずつ確かめながら、自分の子の困りごとも一緒に聞いていけます。
参考文献
- Landwehrmann, T., Paulus, M., & Christner, N.(2024)Preschool children’s resource allocation towards and reasoning about exclusion of agents with disabilities. Cognitive Development, 72, 101510. 大学公開・原著全文/DOI
資料確認日:2026年10月14日









