この記事の要点
- 渡す前に、あとで返す物かを言葉にする: 「帰るときに返してもらう」「プレゼントにする」など、物の行き先まで短く確かめられます。
- 片方の「いいよ」だけで、話が同じとは決めない: 渡す子と受け取る子が、何をするつもりかを聞きます。迷っているなら、今日は渡さなくても構いません。
- 話が食い違ったら、大人も一緒に確認する: すぐに誰かをうそつきと決めず、いつ、何と言って渡したかを整理します。子どもだけで取り戻しに行かせなくて大丈夫です。
友だちに「これ、いいよ」と渡した物を、帰り際に「返して」と言ったら、相手は「もらったんだよ」と答えた。こんな行き違いでは、同じ言葉でも思っていたことが違う場合があります。
一緒に遊ぶ、その日だけ借りる、家へ持って帰って使う、プレゼントとしてもらう。渡すときに、どこまでの話なのかを少し具体的にできます。ここでは主に小学生の物のやり取りを考えます。
「いいよ」の後に、いつまでかを添える
貸すつもりなら、「ここで遊んでいいよ。帰るときに返してね」と、終わりの場面を言えます。家へ持ち帰るなら、持ち主や保護者がよいと考えているか、いつどのように返すかも確認します。
あげるつもりなら、「これはプレゼントにするんだね」と確かめられます。大切にしている物をその場の勢いで渡しそうなら、「本当に渡すか、今日は持ち帰って考えよう」でも構いません。
相手が欲しがっているからといって、渡すことを優しさの条件にする必要はありません。家族で共用している物や、きょうだいの物は、子ども一人の判断で渡さず、使っている人にも確かめます。
受け取る側にも、同じ話か聞いてみる
渡す子が「貸した」、受け取る子が「もらった」と思っているなら、片方だけの確認では行き違いが残ります。
大人がその場にいるときは、「今日はここで使って、帰るときに返す話で合っている?」と、二人に向けて聞けます。言いにくそうなら、子どもに同じ言葉を復唱させるより、大人が説明を手伝います。

学校や遊び場に、持ち込みや物の交換の決まりがあれば、それも先に確認します。相手の家へ持ち帰るやり取りは、双方の保護者に相談する方法があります。毎回記録表を作るのではなく、行き先が変わる場面を中心に確かめられます。
食い違った後は、結論を急がず話をそろえる
帰宅後に知らない物が出てきたら、「誰の物だった?」「何と言って渡してくれた?」と、まず経緯を聞けます。「盗ったの?」と決めつけて始める必要はありません。
話が合わないときは、相手の保護者や、その場にいた先生などと大人同士で確認します。「こちらは借りたつもりでいるようです。どんなやり取りだったか確認したいです」と、分かっていることを伝えられます。
子どもだけで相手の持ち物から取り返したり、どちらかに謝らせて終わりにしたりせず、その物をどう扱うかまで相談します。この記事は日常の行き違いへの提案で、個別の物の所有権を判定するものではありません。
研究では、同じ年齢層でも状況によって答えが違った
NolesとKeilの2019年の研究は、米国の7〜10歳の子どもが、物をあげる、貸すなどの場面で「誰の物か」をどう判断するかを調べました。第一の実験は子ども40人と大学生20人、第二は別の子ども38人と大学生20人です。子どもは主に白人で、中流家庭の出身でした。研究本文
第三者同士の話を聞く課題では、7〜8歳の子どもは、物をあげた後でも最初に持っていた人の物だと答えやすい傾向がありました。一方、自分が受け取る場面として物を示された別の実験では、「あげる」の判断が変わりました。
つまり、この研究から「何歳なら必ず分かる」と線を引くことはできません。また、実験で所有者を答えることと、友だちとの現実のやり取りで約束を守れることも同じではありません。
本文の「返す時点まで話す」「双方の大人で確認する」は編集部の提案です。その声かけで行き違いが減るかを、この研究が検証したわけではありません。子どもが知っているはずと決めず、今のやり取りを具体的にするための手がかりとして紹介しています。
参考文献
- Noles, N. S., & Keil, F. C. (2019). Exploring the first possessor bias in children. PLOS ONE, 14(1), e0209422. DOI: 10.1371/journal.pone.0209422.









